<荒井幸博のシネマつれづれ> 西遊記〜従来像覆す「香取悟空」

2007年7月27日
定番の「リーダーと仲間」
<荒井幸博のシネマつれづれ> 西遊記〜従来像覆す「香取悟空」
 一人のリーダーの下に個性の違う仲間が次々集まり、ひとつの目的に向かって旅を重ねる。そして艱難辛苦(かんなんしんく)の末に目的を遂げるという物語は、「南総里美八犬伝」「清水次郎長」「オズの魔法使い」「ロード・オブ・ザ・リング」の例を挙げるまでもなくいつの世も人気が高い。鬼ヶ島の鬼を犬・猿・キジを従えて征伐する「桃太郎」はこの典型だ。
 ロードムービーではないが黒澤明監督「七人の侍」もこの範疇(はんちゅう)に入る。当然、リメイク作「荒野の七人」も当てはまるし、「オーシャンズ11」も忘れてはならない。

誰もがハマる「西遊記」

 
現在公開中の「西遊記」はこのジャンルの極めつけと言っていいだろう。三蔵法師が孫悟空、猪八戒、沙悟浄を従え、様々な困難を乗り越え、天竺へたどり着くという物語は、発祥の地である中国語圏では数え切れないほど映像化されている。
 日本では古くは1940年の映画「エノケンの孫悟空」や、67年の虫プロダクションのテレビアニメ「悟空の大冒険」などがあるが、何と言っても日本テレビ系列で放送した「西遊記」(78年10月〜79年4月)にとどめを刺す。
<荒井幸博のシネマつれづれ> 西遊記〜従来像覆す「香取悟空」

移り変わるキャスティング

 三蔵法師に美しく気品がある夏目雅子、小柄ですばしっこい孫悟空は芸達者な堺正章、猪八戒がふっくらして愛嬌たっぷりの西田敏行、沙悟浄は、クールで飄々(ひょうひょう)としている岸部シローが演じた。このパート1の布陣でのコラボが最高に面白く、これ以上のキャステイングは考えられないというものだった。
 だからパート2で八戒が西田敏行から左とん平に代ったら見る気がしなくなっていた。その後、宮沢りえ(三蔵法師)・本木雅弘(孫悟空)版(93年)も、牧瀬里穂(三蔵法師)・唐沢寿明(孫悟空)版(94年)も見ることはなかった。
 仮に今、78年版のイメージで「西遊記」を作るとしたら、孫悟空にナインティナイン岡村隆史、猪八戒に田口浩正かドランクドラゴン塚地武雅、沙悟浄に大泉洋、そして三蔵法師に小雪といったキャスティングが並べられるのだが、これでは企画が通らないのだろう。

TVでは高視聴率

  昨年、フジテレビ系列で放送され、高視聴率で今回映画化された「西遊記」は、私のイメージだと悟空の香取慎吾と八戒の伊藤淳史はミスキャストで、はじめに香取慎吾ありきの企画のように思う。
 ただ、私のように78年版のイメージから抜けられない人間には大柄で一本調子な悟空が気になるのだが、知らない世代にとっては、そこが魅力でファミリーピクチャーとして大いに楽しめるのだろう。