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セピア色の風景帖

《セピア色の風景帖》 第七十八回 サイトウ時計店

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 過日、縁あってゼンマイ式の振り子時計が手に入った。だがネジを巻いても動かない。修理してくれる時計店を探したところ、大半の時計店はすでにその種のサービスをやめており、行き着いたのがスズラン街にあるサイトウ時計店だった。

《セピア色の風景帖》 第七十八回 サイトウ時計店

 店主の斎藤政弘さんは時計の状態を調べ、「10日ほど日数を見てほしい」とおっしゃった。 
 予定日に訪れると店の様子が変わっており、棚には50%オフの赤札が。話を伺うと、お願いした修理の仕事を最後に閉店されるとのことだった。

 サイトウ時計店は斎藤さんの父がこの地で昭和初期に創業、国内外の時計を取り扱うほか、精緻な機械式腕時計の修理もこなすという第一級の専門店だったが、時代が進むにつれ時計の仕組みが変わって修理そのものが不要になってきたほか、ご自身も84歳になり、後継者もいないことから決断したという。

《セピア色の風景帖》 第七十八回 サイトウ時計店

 再び時を刻めるようになった修理済みの時計を目の前にし、引退する斎藤さんの職人技を惜しむとともに、いわば使い捨て商品になり下がってしまった時計の地位低下に思いを馳せた。 (F)

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