相続の基礎知識/(61)特別受益
相続人が亡くなった人から生前に受け取った財産のことを「特別受益」といいます。
生前贈与と遺産分割
相続人の中に多額の生前贈与を受けた人がいる場合、単純に法定相続割合で遺産を分けると、生前贈与がなかった人にとっては不公平が生じてしまいます。
この場合の遺産分割の方法は、いったん特別受益の相当額を遺産に戻します。そのうえで法定相続割合で遺産を分け、特別受益を受けた人は相続分から差し引きます。
例えば遺産が3000万円、相続人は兄弟2人で、兄に600万円の特別受益があったとします。600万円を戻した3600万円が相続財産になり、法定割合で分けると兄弟の相続分はそれぞれ2分の1の1800万円になりますが、兄は特別受益の600万円を引き、1200万円が実際の相続額になります。
該当するのは
特別受益に該当するものは、婚姻費用、マイホームを建てる際の資金援助、事業資金の贈与など、通常の扶養の範囲を超えるものです。
教育費は義務教育の中学校までは特別受益ではありませんが、医学部の入学金や授業料、海外留学などに要した費用は特別受益とみなされることがあります。
生命保険は
生命保険金は原則として特別受益には該当しません。ただ相続財産と比べて保険金の額が著しく大きく、保険金の受取人とその他の相続人とで著しい不公平が生じている場合は特別受益に準じることもあります。
相続税と贈与税
特別受益に相続税はかかりませんが、当然ながら生前贈与があった場合は、相続開始前3年(2024年以降は7年)以内であればそれ自体は税法上相続財産に加算しあらためて相続税額が計算されます。生前贈与について贈与税を納付していれば、その贈与税は相続税から控除することができます。
鈴木僚税理士事務所 税理士
鈴木 僚(すずき りょう)
1988年(昭和63年)山形市生まれ。2018年に税理士資格取得。趣味はドライブ。