山形コミュニティ新聞WEB版

泌尿器講座

PSA検査

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 今回は前立腺がんの罹患の有無を調べる「PSA検査」についてのお話です。

前立腺から血液に!

 PSAとは「前立腺特異抗原」の英語名の略で、前立腺から精液の中に分泌されるたんぱく分解酵素です。本来の役割はゼリー状の精液を分解してサラサラにすることで精子の運動性を高め、精子が受精しやすくすることにあります。
 ただ、前立腺がんにより前立腺の構造が壊れると、本来なら精液に分泌されるPSAが血液中に漏れやすくなります。ですので血液中のPSA値を調べ、一定レベルを超えていれば前立腺がんが疑われます。これがPSA検査です。

がんに限らず炎症でも

 PSAは前立腺由来の物質ですから、大腸がんや胃がんなど他の臓器のがんでは血中のPSAは上昇しません。
 ただPSAは前立腺がんだけでなく、前立腺の炎症や、排尿障害になった場合、サイクリングなど会陰部を長時間圧迫するような姿勢をとった直後などに一時的に上昇することがあります。

治療効果の判定にも

 またPSAは前立腺がん細胞からも産生されるので、手術で前立腺を摘出した後でも転移した骨やリンパ節などから産生されることもあります。
 裏を返せば、PSA検査は前立腺がんの治療効果の判定や、再発の判断材料にも役立つというわけですね。

かかりつけ医に相談を

 日本泌尿器科学会では、住民検診では50歳以上、人間ドックでは40歳代からのPSA検査を推奨しています。早期の前立腺がんなら傷が小さく体に負担の少ないロボット手術や、重粒子線治療など体にメスを入れなくても短期間でがんを根治できる治療もあります。
 日本人男性のがん罹患数で上位にある前立腺がん。心配な方は一度、かかりつけ医に相談してみましょう。

いしい腎泌尿器科クリニック 院長

石井 達矢(いしい たつや)

1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。山形大学附属病院、山形市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て、2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士。日本泌尿器科学会認定専門医・指導医。日本医師会認定産業医。

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