精索静脈瘤
男性不妊症の原因として最も多いのが「精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)」です。これは精巣から流れる静脈血が逆流し、陰嚢(いんのう)内の静脈が異常に拡張して瘤(こぶ)状になる疾患です。
精巣にできる瘤
原因は、精巣の静脈弁に異常があり逆流しやすくなっていること、あるいは瘤の約90%は腎(じん)静脈とつながっている左の静脈にできるため、精巣の静脈自体の長さが関係していると考えられます。
精索静脈瘤があると、逆流した静脈血により精巣の温度が上昇するほか、血液のうっ滞によって虚血や低酸素状態が生じます。こうした環境では精子の数や質が低下し、生殖能力の減退につながってしまいます。
また10%の割合で痛みを伴うことが報告されています。
手術で改善

診断は陰嚢を観察・触診するだけでも可能です。エコーを使えば、逆流やうっ滞した静脈が明瞭に確認できます。
幸い、手術を受けると高い割合で精液中の精子の濃度や運動率が改善することが報告されています。
そのため、治療の絶対的適応は「精液所見に異常を認める不妊症の男性」です。もう一つの適応は「陰嚢痛」で、手術後は約9割で痛みが収まるとされます。
顕微鏡下低位結紮術
手術は瘤ができた静脈を糸で縛り、血液の逆流をとめることが狙い。処理する部位によって複数の方法がありますが、「顕微鏡下低位結紮術(けっさつじゅつ)」が推奨されています。
これは顕微鏡を用いて拡大視しながら静脈を選択的に縛るというやり方です。側副血行路を縛ることも可能で、再発率の低さが利点です。
リンパ管を温存できることから、術後合併症のひとつの陰嚢水腫の発生率も低いとされます。
ただ、高度な技術を要するため、実施可能な施設が限られます。
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男性不妊症や陰嚢に痛みを感じたら、専門医に相談することをお勧めします。

いしい腎泌尿器科クリニック 院長
石井 達矢(いしい たつや)
1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。山形大学附属病院、山形市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て、2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士。日本泌尿器科学会認定専門医。日本医師会認定産業医。
