親の因果が子に報い
「親の因果が子に報い」ということわざがありますが、父親の生活習慣が生まれてくる子どもにどのような影響を及ぼすかについて考察してみましょう。
飲酒→先天性心疾患
中国・中南大の研究グループが2020年、先天性心疾患を有する約4万人と有さない約30万人を含む55の研究を「メタ解析」したところ、妊娠前後3カ月間に飲酒した父親の子どもは、飲酒しない父親の子どもに比べ先天性心疾患のリスクが44%上回っていることを突き止めました。
喫煙→喘息・肥満
英サウサンプトン大の研究グループは23年、875人を対象に遺伝子のDNAメチル化パターンを調べ、母親が妊娠する前の父親の喫煙の影響を調べました。
その結果、15歳未満で喫煙した父親の子どもには19カ所でDNAメチル化が確認され、喘息(ぜんそく)、肥満と関連していました。19カ所のうち16カ所は母親や当人の喫煙歴と関連性がありませんでした。
運動→行動などに優れ

中国・南京大の研究グループが25年、激しく運動させた雄マウスと運動させていない雌マウスを交配させたところ、運動不足の雄マウスの子より長時間走ることが分かりました。運動訓練された雄マウスの精子を受精卵に注入すると、生まれてきた子どもは行動、代謝、分子レベルで運動訓練を受けた表現型を有していました。
父親の運動が、受精卵の遺伝子発現を再プログラムする精子起源の小分子RNAを通じて子孫の持久力と代謝の健康を改善し、運動のメリットが世代を超えて受け継がれることが明らかになりました。
子どものためにも
父親の生活習慣が良くも悪くも子どもに引き継がれるようです。

山形徳洲会病院院長
笹川 五十次(ささがわ いそじ)
1982年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業、86年同大学大学院修了後、ハワイ州立大学医学部を経て、04年に山形徳洲会病院副院長、08年から現職。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医、日本透析医学会認定透析専門医。
