夜間頻尿への対策
朝晩の冷え込みが厳しさを増し、「夜中のトイレに何度も目が覚めてしまう」とお悩みの方も多いはず。今回はそんな夜間頻尿(ひんにょう)の対策についてお話ししましょう。
対策の基本は2つ
夜間頻尿とは「就寝から起床までに1回以上尿のためにトイレに起きること」で、60歳以上の約8割が該当するとの報告があります。特に高齢者の場合、トイレ往復時の転倒で骨折し、寝たきりにつながることで健康寿命に大きく影響することもあります。
夜間頻尿に対する対策の基本は「夜間の尿量を減らすこと」と「膀胱(ぼうこう)の蓄尿量(ちくにょうりょう)を増やすこと」の2つです。
夜間の尿量を減らす
まず夜間の尿量を減らすには、就寝3~4時間前からの水分摂取を控えることが基本です。また夕食時の塩分摂取を減らせば体内の水分保持量が抑えられ、夜間の尿量を減らす効果があります。
脳梗塞(のうこうそく)予防として寝る前の飲水が一部で推奨されていますが、脱水状態でもない限り飲水で血液がサラサラになることはありません。

下肢筋力を鍛える
下肢の筋力が低下すると日中に下半身に水分がたまりやすくなり、夜間寝ている間にその水分が体幹に戻ることで尿量が増加してしまいます。
これを防ぐには、青竹踏みやウォーキングなどが有効です。これらの運動が難しい場合は弾性ストッキングを着用し、浮腫(ふしゅ)を防ぐことで夜間頻尿の改善が期待できます。
膀胱の蓄尿量を増やす
膀胱の蓄尿量を増やすには「膀胱訓練」が効果的です。これは、日中に尿意を感じてもすぐに排尿せず、できるだけ膀胱に尿をためてから排尿する習慣を少しずつ身につける方法です。
前立腺(ぜんりつせん)肥大症や過活動膀胱、睡眠障害がある場合はお薬による治療で蓄尿は増やせます。
それでも症状が改善しない時は、お近くの泌尿器科に相談して下さい。

いしい腎泌尿器科クリニック 院長
石井 達矢(いしい たつや)
1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。山形大学附属病院、山形市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て、2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士。日本泌尿器科学会認定専門医。日本医師会認定産業医。
