山形コミュニティ新聞WEB版

脳の四方山話

手の麻痺と向き合う

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 脳卒中の代表的な後遺症に、手が思うように動かない「麻痺(まひ)」があります。ボタンを留める、コップをつかむといった普段何気なくやっていたことが急に難しくなり、「どうしたら戻るんだろう」と不安になる方もいらっしゃるはず。

 今回はそんな麻痺との向き合い方についてお話ししましょう。

とにかく動かすこと

 基本はリハビリですが、麻痺は脳からの命令がうまく届かない状態なので、考え方としては「手そのものの訓練」ではなく、「脳にもう一度手の使い方を思い出させる」ということことを心がけましょう。

 そのためリハビリの最初のステップは とにかく動かすこと、動かなくても、動かそうとしてみることを繰り返すことです。その努力が脳を刺激し、回復を促します。

 リハビリ専門職の方に正しく動かしてもらったり、正常な片方の手を使ってストレッチしたりするだけでもOKです。

リハビリ機器も利用

 昨今はリハビリ専用機器も多彩です。例えばEMSは自分が「動かそう」と思ったタイミングに筋肉に電気が流れ、実際の動きをサポートしてくれます。「自分の意思で動いた!」という感覚は脳にとても良い刺激になります。

 さらに、脳の動きを読み取って機械を動かす BMIや、ゲーム感覚でリハビリできるVR訓練 も登場しています。使用できる施設は限られますが、試してみる価値はあると思います。

毎日の積み重ねで

 大切なことは、やはり「毎日」「ちょっとずつ」「生活の中で使う」ことに尽きます。家事の中でできること、例えばタオルを絞る、洗濯物を取り込む、ズボンをたたむなど、実際の生活動作が単純ですが一番のリハビリになります。

 その中で小さな成功体験を積み重ねながら前に進んでいくことが、新しい動作獲得につながるのです。

ミロク脳神経リハビリクリニック 院長

齋藤 佑規(さいとう ゆうき)

1980年(昭和55年)酒田市生まれ。酒田東高から山形大医学部に進み、脳外科医として山大医学部付属病院、山形済生病院などでの勤務を経て2023年9月にミロク脳神経リハビリクリニックを開業。日本脳神経外科学会専門医・日本リハビリテーション医学会専門医。

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