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乳腺外来の現場から・内科の現場から

乳腺外来の現場から/乳腺症

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 やまコミ読者のみなさんは「乳腺症(にゅうせんしょう)」という言葉をお聞きになったことがありますか?

すべて良性疾患

 乳腺症とは、乳房に生じる良性の変化や症状をひとくくりにまとめた総称です。具体的には乳房の張りや痛み、しこりのほか、分泌物がたまる「のう胞」ができる、乳頭から分泌物が出るといった症状も乳腺症に含まれます。また、乳がん検診で「石灰化(せっかいか)」が指摘された場合も乳腺症によるケースが大半です。

 結論から言えば、乳腺症はあくまで良性疾患であり、乳腺症が乳がんに変化することはありません。

原因はホルモンの乱れ

 乳腺症の原因は女性ホルモンのアンバランスによるものとされ、月経前に症状が悪化し、月経が終わると症状が改善するのが特徴です。

 女性ホルモンが関係しているため、閉経前の女性に多い傾向がありますが、閉経後に症状が出る場合もあります。これは閉経後も副腎(ふくじん)から分泌される男性ホルモンが酵素の働きで女性ホルモンに変換されるからです。

心配なケースも

 先ほど乳腺症が乳がんに変化することはないとお断りしましたが、注意が必要なのは、症状が乳腺症によるものなのか、そうでないかをご自身で判断するのは困難だという点です。乳頭からの分泌物に血液が混じっていれば、それは乳腺症としての分泌ではなく、乳がんの可能性もあります。

 また、本来なら乳がんでは痛みを感じないものですが、痛いから乳がんではないということではありません。痛む乳房の反対側に乳がんが発見されることもあります。

乳房を意識する習慣を

 乳腺症だと思い込んで乳がんの発生を見落としてしまうのが最も危険なことです。乳房を意識する生活習慣(ブレスト・アウェアネス)を心がけ、異常を感じたら、すぐに乳腺外科を受診しましょう。

うるしやまクリニック院長 院長

尾形 貴史(おがた・たかし)

2007年山形大学医学部卒業。同大付属病院、公立置賜総合病院、山形済生病院などを経て現職。日本乳癌学会乳腺認定医。2025年2月に「うるしやまクリニック」開院。

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