内科の現場から/甲状腺(下)
前回簡単に触れた、甲状腺機能亢進症(こうしんしょう)の代表のバセドウ病と、低下症の代表の橋本病についてのお話です。
バセドウ病と橋本病
バセドウ病の症状は、動悸(どうき)、発汗、手の震え、イライラ、下痢、食べているのに体重が減る、などが代表的なものです。
一方、橋本病の症状はバセドウ病とは真逆で、寒がり、便秘、食欲はないのに体重が増える、などです。やる気が出ない、もの忘れなども認められ、うつ病や認知症として治療されることもあります。
皮膚が乾燥し体がだるくなり、酷(ひど)い脱毛に悩まされることもあります。

どちらも首が腫れる
いずれも「首が腫(は)れる」という症状は共通していますが、バセドウ病では比較的柔らかく腫れるのに対し、橋本病ではゴツゴツと硬く腫れるという違いがあります。
またバセドウ病を長く患うと眼球が飛び出しているような顔貌になります。橋本病では身体がむくみ、このむくみは指で押しても痕(あと)が残らないというのが特徴です。
それぞれの治療法は?
バセドウ病の治療の基本は薬物治療です。甲状腺ホルモンを抑える薬を内服し、ホルモンを正常に落ち着かせることで症状の改善や甲状腺の腫れを改善させます。これで効果がなければ放射性ヨウ素内用療法や手術療法を検討します。
橋本病の治療は、ホルモンの数値が異常に少ない場合はホルモンを薬で補充します。ホルモンの数値が正常なら薬は不要ですが、放置しておくと悪性リンパ腫(しゅ)という腫瘍(しゅよう)が出現する恐れがあり、超音波検査で定期的に経過観察を行うことが求められます。
気になる症状があれば
紹介した症状は甲状腺ホルモンの影響だけで出現するものではありませんが、どちらかに偏って複数該当する場合は、一度お近くの医療機関で検査してみることをお勧めします。

うるしやまクリニック院長 院長
尾形 貴史(おがた・たかし)
2007年山形大学医学部卒業。同大付属病院、公立置賜総合病院、山形済生病院などを経て現職。日本乳癌学会乳腺認定医。2025年2月に「うるしやまクリニック」開院。
