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ACNES

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 今回は皮膚の下を通る神経が原因で起こる腹部の痛み「前皮神経絞扼(こうやく)症候群(ACNES)」についてお話しします。

腹壁神経の痛み

 ACNESとは、腹部の皮膚感覚を担う神経が筋膜(きんまく)などで締め付けられる(絞扼)ことによって起こる慢性的な腹痛です。

 この神経は「腹壁神経」と呼ばれ、腹筋を貫通し、皮膚まで達するルートをたどっていますが、その途中で締め付けられると神経が興奮して痛みを感じるようになります。

 このことからACNESは「腹壁神経絞扼症候群」とも呼ばれます。

診断で「原因不明」も

 症状は、腹筋上の特定の場所に「チクチク」「ズキズキ」とした痛みが続きます。多くの場合、指先で押すと鋭い痛みが誘発され、痛みの場所は神経が貫通する場所に限られます。

 また内臓に異常がないのにお腹が痛いという特徴的な症状があります。実際、胃カメラなどで検査をしても異常が見つからず、「原因不明」とされてしまうことが少なくありません。

腹筋に負荷がかかると

 その原因としては、腹筋を使う動作や姿勢の歪み、慢性的な筋緊張などが考えられています。腹圧がかかるような長時間の立ち仕事やデスクワーク、運動習慣の変化などがきっかけになることもあります。

治療の基本は麻酔注射

 治療は、痛みの出ている場所に局所麻酔薬を注射する「神経ブロック注射」が中心になります。1回の注射で痛みが軽減する方もいれば、複数回の治療が必要な場合もあります。その他、神経の興奮を抑える薬でも改善が見込めます。

 それでも症状が改善しない場合や残存する場合には手術を選択することもあります。

十日町ようへい内科クリニック 院長

中本 洋平(なかもと ようへい)

1978年(昭和53年)、岩手県盛岡市生まれ。新潟大学医学部を卒業後、新潟市民病院などで内科医として研鑽を積む。2024年10月に十日町ようへい内科クリニックを開業。総合内科専門医、感染症専門医、Japanese Medical Emergency Care Course(JMECC)インストラクター。

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