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絶食と性欲

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 食物摂取量の減少は、体重減少以外にもいろいろな影響を与えるため、繰り返し研究の対象となっています。

絶食マウスは性欲回復

 ドイツ神経変性疾患研究所の研究チームは2025年、生後2カ月の雄マウスを対象に24時間餌(えさ)を与えないことを1日おきに22カ月継続してみました。この断続的絶食の間、雄マウスは当然のことながら高齢化していきますが、雌マウスとは接触させていません。

 そして22カ月間の絶食終了後、生後3カ月の若い雌マウスと接触させたところ、何と、同年齢で自由に餌を与えていた雄マウスより交尾回数は増加していました!

セロトニンの低下

 同チームが結果を検証したところ、断続的絶食による精巣重量、精液所見、男性ホルモンへの影響は認められませんでしたが、神経伝達物質である「セロトニン」の低下を認めました。

 セロトニンは人間においても脳内の性欲を抑制する作用があることで知られ、セロトニンが低下することは逆に性欲を高めることにつながります。

トリプトファンが影響

 セロトニンの合成にはアミノ酸の「トリプトファン」が必要ですが、トリプトファンは食事から摂取するしかない9種の必須アミノ酸の一つで、マウスも自分では合成できません。

 断続的絶食マウスは自由に餌を与えられたマウスに比べ約15%少ないカロリーしか摂取できなかったため、トリプトファンの摂取量も低下し、結果としてセロトニンの低下を引き起こしたと考えられます。

人間も同様?

 人間においても断食などの食物摂取量の制限は高齢者に限らず、性欲減退に効果があるかもしれません。

山形徳洲会病院院長

笹川 五十次(ささがわ いそじ)

1982年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業、86年同大学大学院修了後、ハワイ州立大学医学部を経て、04年に山形徳洲会病院副院長、08年から現職。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医、日本透析医学会認定透析専門医。

山形徳洲会病院

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