山形コミュニティ新聞WEB版

内科あれこれ

腹部エコー

Share!

 今回は健康診断などでおなじみの「腹部エコー」について所見を述べたいと思います。

超音波で臓器を調べる

 腹部エコーの正式な名称は「腹部超音波検査」で、その名の通り、身体に超音波を投射し、跳ね返ってくる反射波(エコー)から臓器の状態を調べる検査です。実際には超音波を通しやすくするためのゼリーを塗り、探触子(プローベ)と呼ばれる機械をお腹に充てて検査を行います。

 「超音波なんて身体に当てて大丈夫?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、CTのように放射線被曝(ひばく)の心配もなく、MRIのように「体内に埋め込み金属がある人はNG」といったこともありません。

見えないことも

 腹部エコーでは様々な臓器を対象に炎症やがんなどがあるかどうかを診断しますが、欠点もあります。ひとつは超音波は気体が苦手という点で、腸や胃にガスがあるとその先は見えなくなります。またお腹の脂肪が多ければ、膵臓(すいぞう)や脾臓(ひぞう)は見えにくくなります。

 腹部エコーの結果で「膵臓、抽出不良」とあった場合、それは異常があったのではなく、「よく見えなかった」という意味なのです。

CTが見逃しても

 だからといって腹部エコーに意味がないとはいえません。確かに腹部エコーで見逃してCTで異常が見つかるケースがありますが、その逆、つまりCTが見逃した異常を腹部エコーが見つけることもあります。

 CTと腹部エコーは別物で、それぞれにしか分からない臓器や疾患があると考えていただければいいでしょう。

必要あれば検査を

 個人的には過剰な治療や検査は避けるべきと考えており、「何が何でも腹部エコーを」と声高に推奨するわけではありませんが、メリットやデメリットをご説明のうえ、必要な場合は検査をお勧めしています。

きくち内科医院 院長

菊地 義文(きくち よしふみ)

1985年(昭和60年)東北大学医学部卒業。同大医学部第三内科を経て96年に山形市立病院済生館へ。2013年4月に「きくち内科医院」開院。

記事閲覧ランキング

  • 24時間
  • 週間