山形コミュニティ新聞WEB版

泌尿器講座

低活動膀胱

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 以前、急に尿意をもよおして頻尿の原因になる「過活動膀胱(ぼうこう)」について解説したことがありますが、今回は真逆の病気である「低活動膀胱」についてのお話です。

尿意や尿勢が衰える

 低活動膀胱は膀胱の収縮を司る排尿筋の動きが低下することにより、尿意が低下したり、尿の勢いが衰えたり、尿が出るまでに時間がかかってしまったりする病気です。重症化すると自分で尿ができなくなる「尿閉(にょうへい)」に至ることもあります。

 低活動膀胱に陥る原因としては、①糖尿病や脳血管疾患などの神経疾患②前立腺肥大症③加齢による膀胱の収縮力低下④骨盤内手術や放射線治療の影響――などがあります。

排尿筋の圧を確認

 診断する際は、排尿筋の圧が低いことを確認します。病院で行われる「内圧尿流検査」という膀胱と肛門に圧を測定するセンサーを挿入する検査を行い、排尿時の膀胱内の圧と直腸内の圧を測定します。

 排尿筋の圧は、膀胱内の圧から腹圧である直腸内圧を差し引いたものになります。

直接作用する薬はなく

 残念ながら低活動膀胱に直接作用する薬剤はありません。原因薬剤があれば中止し、排尿筋の力が弱くても排尿できるよう尿道の抵抗を下げる「α1ブロッカー」を使用します。

 副交感神経から放出される神経伝達物質を増やす目的で、アセチルコリンを分解する酵素を阻害する「ジスチグミン」という薬が使用されます。

カテーテルで排出も

 排尿直後でも多くの尿が膀胱に残ってしまう場合は、膀胱に残った尿をその都度専用のカテーテルを自分で挿入して排出させます。

 尿道に継続的にカテーテルを挿入して1カ月に1~2回の交換を行う方法もありますが、尿路感染症などの合併症の頻度が高く、適応は寝たきり状態の方や手が不自由な方などに限られます。

いしい腎泌尿器科クリニック 院長

石井 達矢(いしい たつや)

1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。山形大学附属病院、山形市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て、2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士。日本泌尿器科学会認定専門医・指導医。日本医師会認定産業医。

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