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荒井幸博のシネマつれづれ

影裏(えいり)

影裏(えいり)
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親友だと思っていた彼が…

 県内ロケもあった「るろうに剣心」シリーズや「3月のライオン」などでメガホンをとった盛岡市出身の大友啓史監督が、同じ盛岡在住で、盛岡を舞台に描いて芥川賞を受賞した沼田真佑の同名小説を実写映画化したのが本作。

 今野秋一(綾野剛)は、転勤先の盛岡で孤独に暮らしていたが、同僚の日浅典博(松田龍平)と出会い、不思議にウマが合い親しくなる。酒を酌み交わし、渓流釣りを楽しむ2人。それは遅れてきた青春のようだったが、日浅は何も告げずに突然会社を辞め、姿を消してしまう。


 不意の別れに打ちひしがれる今野の前に数カ月後、日浅が何事もなかったかのように現れ、2人の交友が再開するが、ある日、夜釣りに行った2人は些細なことで仲違いをしてしまう。それが2人が会った最後になる。


 そして東日本大震災。暫くして今野は日浅が行方不明になっていることを知る。今野は日浅を探す中で、同僚の西山(筒井真理子)、日浅の父(國村隼)や兄(安田顕)から聞かされる日浅像が自分の知る彼とは全く違うものだったことに動揺するのだった。

 主演の綾野と松田は意外にも初顔合わせ。大友監督は「俳優の質として日本で一番素敵な2人。どっちをどっちの役にするかは最後まで悩んだが、この2人でなければ映画化できなかった」と打ち明ける。


 また「子どものころからたばこの匂いやジャズの香りがするアート系のヨーロッパ作品が好きだった。そんな作品ができたので大人に観て欲しい」と語る。


 俳優では、ワンシーンだけの出演だが強い印象を残した中村倫也も絶賛。そして盛岡の渓流などの美しい自然や音、光と影のコントラストにも注目して欲しいという。

 他にも一関市のジャズクラブや地酒なども登場する郷土愛に満ち溢れた大友監督の渾身作。衣装は、公開中の「AI崩壊」も手がける真室川町出身のスタイリスト荒木里江さんが担当しているのも嬉しい。

 

シネマパーソナリティー

荒井あらい 幸博 ゆきひろ

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。


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