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荒井幸博のシネマつれづれ

天外者(てんがらもん)

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三浦春馬 渾身の遺作

 7月18日に30歳の若さで自死した三浦春馬さんの最後の主演映画となった「天外者」が11日から公開されている。


 幕末から明治初期にかけて世界に目を向けて奔走し、日本経済の礎を築いた実業家・五代友厚の生涯を描いた作品。天外者とは鹿児島の方言で「凄い才能の持ち主」の意。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 天外者(てんがらもん)

 ペリー来航に日本中が騒然となる中、若き薩摩藩士・五代才助(後の友厚、三浦)は新時代の到来を予感する。攘夷か開国かで揺れる藩内の抗争から距離を置き、世界に目を向けるようになる。


 遊女・はるとの出会いを通じて誰もが夢を描ける国を創るため、同じ志を持つ坂本龍馬(三浦翔平)、岩崎弥太郎(西川貴教)、伊藤博文(森永悠希)らと「実もいらぬ、名もいらぬ、ただ未来へ!」と激動の時代を駆け抜けていく――。

 三浦さんには亡くなる約1年前の昨年8月、主演映画「アイネクライネナハトムジーク」の公開前に仙台市でインタビューに応じていただいた。


 その際の爽やかな笑顔と真摯な受け答えにおおいに好感を抱き、この先大きく飛躍して映画・演劇界を牽引する存在になることを確信した。それだけに突然の訃報はショックだった。

 頭脳明晰・才気煥発で英語や武芸にも秀でていた五代は、ともすれば周囲からは浮いた存在で疎まれがち。そんな五代に、三浦さんは自分を重ねる部分があったのではないだろうか。


 実際、本作にかける三浦さんの思い入れはひとしおで、龍馬役の三浦翔平、妻役の蓮佛美沙子は三浦さん自身がオファーし、監督に進言してのものだったとか。精魂を本作に傾注していたことは観れば伝わってくる。

 本作は限られた製作費に加え、コロナ禍で満足に広告が打てなかったにも拘わらず、女性客を中心に公開3日間で11万8千人を動員。興収は1億7千万円とは時代ものとしては上々の滑り出し。


 202館だった上映館数も追加され、より拡大の様相を呈してきた。

シネマパーソナリティー

荒井あらい 幸博 ゆきひろ

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。


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