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荒井幸博のシネマつれづれ

カモンカモン

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モノクロの奥にドラマ

 ニューヨークを拠点に全米を飛び回るラジオジャーナリストのジョニーは一人暮らし。ロサンゼルスに住む妹のヴィヴが深刻な理由で家を留守にする数日間、9歳の甥ジェシーの面倒を見ることになり、妹の家で甥との共同生活を始めることになる。

<荒井幸博のシネマつれづれ>カモンカモン

 好奇心旺盛、自由奔放で気まぐれなジェシーに翻弄されっぱなしのジョニーだった。さらに困ったことに妹の留守が長引くことになり、彼はジェシーを連れてニューヨークに行くのを決めるのだったが――。 美しいモノクロームの映像とともに描写されるヒューマンドラマ。


 伯父と甥のぎこちない関係を中心に、母と息子、そして亡き母を巡る兄と妹の想い…。身内でも想いを伝え分かり合えることの難しさ大切さを痛感。


 監督・脚本のマイク・ミルズは、自分が父親になったことで経験した子育ての苦労と面白さにインスパイアされて本作を企画したという。モノクロ映像にしたのは「日常から切り離して“物語”のなかへ導くため」と語っている。

 ジョニーを演じるのは2019年公開の「ジョーカー」での怪演でアカデミー主演男優賞を獲得したホアキン・フェニックス。本作ではやや小太りな優しい独身中年男に扮し、頬もやせこけた狂気のジョーカーと同一人物とは思えないほどだ。


 ジェシー役のウディ・ノーマンも新星ながら存在感を放っているほか、ヴィヴを演じたギャビー・ホフマンは「フィールド・オブ・ドリームス」(1990公開)でケビン・コスナーの娘を演じている。


 劇中に挿入される子どもたちへのインタビューも見どころ。台本がなく、彼らは思いのたけを自らの言葉で表す。不幸な境遇の中でも妹を思いやる少年がいれば、世界情勢を語る子もいる。子どもだからなどと侮れず、ジェシーに重なる。


 物語は淡々と進む。特に劇的に感動する場面があるわけではないが、気がつけば熱いものが込み上げ、幸せな気持ちになれる映画だ。

 

シネマパーソナリティー

荒井あらい 幸博 ゆきひろ

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。


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