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荒井幸博のシネマつれづれ

〈荒井幸博のシネマつれづれ〉映画が語る戦後80年

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戦争の悲惨さと平和の尊さ

 今年は戦後80年の節目の年。それだけに前号で紹介した「木の上の軍隊」をはじめ、戦争を題材にした作品の公開が多い。

 8月1日から公開されているのが、看護学生だった少女たちの視点から原爆投下の悲劇を描いた「長崎―閃光の影で」と、不朽の反戦アニメーション映画「この世界の片隅に」の2本。

 終戦の日の8月15日からは、ナチスの迫害からユダヤ人の子どもたちを守ろうと孤軍奮闘した実在のユダヤ人医師を描いた1990年制作の「コルチャック先生」がリバイバル上映される。

 大岡昇平の小説「野火」は1959年に市川崑監督が映画化しているが、2015年に塚本晋也監督が現代的な視点で原作を換骨奪胎(かんこつだったい)し、戦争の悲惨さや人間の本質を深く掘り下げてリメイクしている。

 15年版「野火」は国内外で数々の賞を受賞し、初公開以来、毎年終戦記念日を中心にアンコール上映が続いている。山形ではフォーラム山形が塚本監督を迎えて8月17日に上映する予定。

 戦後沖縄を舞台に、史実に記されてこなかった真実を描いて直木賞を受賞した「宝島」は、大友啓史監督により映画化され、9月16日から公開される。

 戦争の悲惨さや愚かさを描いた映画の白眉(はくび)とされるのが、野坂昭如の同名小説をスタジオジブリが制作したアニメ映画「火垂るの墓」。24年9月16日に世界190以上の国と地域で配信が開始された際、日本で配信されなかったことで議論が巻き起こったが、25年7月15日からスタジオジブリ作品としては初めて日本国内配信が開始され、8月15日に日本テレビ系列で放映される。

 子どもは、生まれる時代や国、親を選べない。「火垂るの墓」は子どもたちが〝この時代(この国、この親)に生まれて良かった〟と思える日本にして欲しい、だから戦争は絶対やってはいけない――そんな当然のことを訴える映画だ。

 節目の年のこの夏、あなたはどの映画を観て何を想いますか。

シネマパーソナリティー

荒井あらい 幸博 ゆきひろ

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。

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