五感の男女差(4)
視覚や聴覚などの感覚は、「視床(ししょう)」という中継基地を経由してそれぞれの中枢に到達するのに対し、嗅覚(きゅうかく)は感情や本能に関わる「大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)」に直接伝達されます。
嗅覚とプルースト効果
嗅覚によってもたらされる匂(にお)いは、過去の経験とつながっています。例えば、特殊な匂いの食べ物を美味しいと感じる体験をすれば、「美味しい匂い」という記憶になります。匂いが過去の記憶や感情を鮮明に呼び起こすことを「プルースト効果」といいます。
これは脳の中で、匂いをつかさどる「嗅覚野(きゅうかくや)」と記憶をつかさどる「海馬(かいば)」が近くにあるからとされています。
匂いに敏感な女性
女性の脳にある嗅覚中枢の細胞は男性より多く、男性より嗅覚が優れていることが分かっています。太古の昔から、女性は匂いで食物の安全性を確かめ、危険を察知する必要に迫られていたからと考えられます。
自分の子どもの匂いと他人の子どもの匂いを判別する必要もあったかもしれません。
また、女性にはヒト白血球抗原(HLA)の違いを匂いで嗅ぎ分け、親族の匂いを嫌う傾向にあります。これは近親相姦を避けるという本能によるものとされます。
年ごろの娘さんが父親の匂いを嫌うのも最も近い親族を避ける本能なのかもしれません。

子育てで磨かれる触覚
これまで味覚、視覚、聴覚、嗅覚について考察してきました。五感の最後となる触覚は、女性の方が男性よりも敏感とされます。これは女性の皮膚の方が男性より薄いことや、女性の指先の方が男性より細いことなどに起因しています。
女性は子どもの変化を速やかに察知し、触れることで相手の気持ちを感知することもできます。これも子育てに不可欠な能力と考えられます。

山形徳洲会病院院長
笹川 五十次(ささがわ いそじ)
1982年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業、86年同大学大学院修了後、ハワイ州立大学医学部を経て、04年に山形徳洲会病院副院長、08年から現職。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医、日本透析医学会認定透析専門医。


