〈荒井幸博のシネマつれづれ〉レンタル・ファミリー 2月27日(金)公開
米俳優の東京での気づき
死期が迫る中年男性の最期の5日間を描いた「ザ・ホエール」で第95回アカデミー主演男優賞を獲得したブレンダン・フレイザーが主演を務め、全編日本で撮影したヒューマンドラマ。メガホンを取ったのは日本人監督のHIKARI。
アメリカ人俳優フィリップ(フレイザー)は新しい何かを求めて7年前に東京に移住し、細々と俳優業を続けている。CMで人気を博したことはあったが、近ごろは世間から忘れ去られようとしている存在だった。
そんなある日、フィリップはレンタル・ファミリー会社を経営する多田から仕事を依頼される。レンタル・ファミリーとは、依頼人にとって大切な家族の一員を演じる仕事だった。
気が進まないまま、偽装結婚を依頼する若い女性、失踪した父親を恨んできたハーフの少女、認知症の老優などと向き合う中で、“偽り”のはずの関係性が思わぬ方向に向かっていく――。

オスカー男優のフレイザーが、日本人監督のもとで、日本の文化に向き合う主人公を演じるという設定が面白い。テーマも重すぎず、軽すぎず、ちょうどいい塩梅。
前半は近代的な現在の東京が映し出され、後半は古き良き日本の自然や文化に変わるとともに、フィリップの微妙な心境の変化を繊細に描いている。
共演の平岳大、森田望智、山本真理、柄本明らの演技も特筆もので、一級のエンターテインメント作品といえるだろう。
フレイザーは1992年公開の「青春の輝き」でマット・デイモンやベン・アフレックを脇に主演。その後、世界的大ヒット「ハムナプトラ」シリーズの主演でスター街道を走っていた。
その後、性的暴行被害や離婚などで不遇をかこつ時期もあったが、22年公開のザ・ホエールで劇的復活を遂げ、ファンはブレンダンとルネサンスをかけ合わせ、「ブレネサンス」と呼んだ。
そんなブレンダンだからこそ、フィリップははまり役だったと思う。

シネマパーソナリティー
荒井 幸博
1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。