視床痛
脳卒中の後遺症として、運動麻痺(まひ)と並んで深刻なのが「痛み」です。中でも「視床痛」は経験した人にしか分からない強い苦痛を伴います。
視床がダメージを受け
脳の中心部にある視床は、全身の感覚の中心としての役割があります。脳梗塞(こうそく)や脳出血で視床がダメージを受けると、脳が誤作動を起こし、本来なら痛みと感じないはずの微細な刺激を、脳が激痛として過剰に変換してしまうのが視床痛です。
強烈な痛みが
その痛みは一般的な怪我の痛みとは違います。多くの患者さんは「焼けるような」「鋭く刺されるような」といった表現で訴えます。さらには衣服が軽く擦れたり、そよ風が当たったりするだけの刺激が激痛に変わる「アロディニア」という現象も生じます。
このため日常生活の何気ない動作さえも恐怖の対象となってしまい、精神的な疲労を深めてしまうケースもあります。
多角的治療が必要に

視床痛の治療は一つの方法に固執せず、多角的なアプローチが必要です。一般的な痛み止めは脳の誤作動には届きにくいため、神経の過剰な興奮を静めるタイプのお薬や、痛みの伝達経路を調整するお薬を組み合わせて調整します。
リハビリも重要です。痛いからといって動かさずにいると、脳はますます痛みに過敏になってしまうため、温熱療法や鏡を用いた視覚的なフィードバックなどを通じ、脳に「ここは痛くない」という正しい情報を再学習させていく根気強いプロセスが必要です。
専門医が伴走します
昨今は、痛みのある神経を直接ブロックする手術や、脳への磁気刺激など治療の幅は確実に広がっています。
視床痛は完治が難しいとされますが、専門医と協力しながら自分に合ったコントロール方法を見つけ、痛みに振り回されない穏やかな日常を取り戻すことは可能です。

ミロク脳神経リハビリクリニック 院長
齋藤 佑規(さいとう ゆうき)
1980年(昭和55年)酒田市生まれ。酒田東高から山形大医学部に進み、脳外科医として山大医学部付属病院、山形済生病院などでの勤務を経て2023年9月にミロク脳神経リハビリクリニックを開業。日本脳神経外科学会専門医・日本リハビリテーション医学会専門医。
