乳腺外来の現場から/乳腺炎
乳腺炎(にゅうせんえん)とはその名の通り、乳腺に炎症が起きてしまう病気です。
多くは授乳期に発症
乳腺炎には授乳期に生じるものと、非授乳期に生じるものがあり、圧倒的に多いのは授乳期乳腺炎です。さらに授乳期乳腺炎を大別すると、「うっ滞性乳腺炎」と「化膿性(かのうせい)乳腺炎」に分けられます。
うっ滞性と化膿性

うっ滞性乳腺炎は授乳がうまくいかなかったり、赤ちゃんが左右均等に母乳を飲んでくれなかったりすることで母乳の流れが滞り、乳腺に炎症が生じてしまうことが主な原因です。脂質や甘いものの過剰摂取も原因とされます。症状は痛みやしこり、乳房の一部の発赤、発熱などです。
化膿性乳腺炎は、うっ滞性乳腺が細菌感染を起こした状態で、悪寒(おかん)や関節痛、高熱など、インフルエンザに似た症状がでることもあります。
早めの治療を
治療としては、母乳のうっ滞だけが原因なら、投薬に頼らずとも乳腺炎を起こしている側の乳房からしっかり授乳をしてあげることだけで改善することもあります。
高熱や発赤(ほっせき)が認められる場合は、授乳中でも安心して使用できる抗生剤や鎮痛薬を内服します。ここで大切なことは、治療はなるべく早く行うことです。
特に化膿性乳腺炎の場合、治療が遅れると薬での治療が反応しにくい「乳腺膿瘍(のうしょう)」を形成してしまい、乳房を切開して排膿(はいのう)処置を余儀なくされることがあります。
非授乳期乳腺炎
非授乳期乳腺炎には「肉芽腫性(にくげしゅせい)乳腺炎」「乳輪下膿瘍」などがあります。前者ははっきりした原因はわかっておらず、後者は乳頭が陥没(かんぼつ)している方に認められることが多いようです。いずれも外科的治療が必要なケースが多くなっています。
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いずれも症状に心当たりのある方は医療機関の受診をお勧めします。

うるしやまクリニック院長 院長
尾形 貴史(おがた・たかし)
2007年山形大学医学部卒業。同大付属病院、公立置賜総合病院、山形済生病院などを経て現職。日本乳癌学会乳腺認定医。2025年2月に「うるしやまクリニック」開院。
