PM2.5と男性生殖機能
「PM2・5」といえば「中国から飛来する大気汚染物質」を連想しがちですが、大気中に浮遊する直径2.5マイクロメートル(マイクロはメートルの100万分の1)の微小粒子状物質を意味します。
単一の化学物質ではなく、炭素、硝酸塩(しょうさんえん)、硫酸塩、金属など様々な物質の混合物で、もちろん中国だけでなく、日本でも発生します。
精子の産生に影響
PM2・5が人体に与える影響が懸念されていますが、男性生殖機能への影響も報告されています。
中国・香港中文大の研究グループは2017年、15~49歳の男性約6500人を対象に、短期(3カ月)と長期(2年)に分けてPM2・5に曝露(ばくろ)された場合の精液所見を調査したところ、PM2・5の濃度が上昇すると正常形態率が短期で0.83%、長期で1.29%減少することが分かりました。PM2・5がDNAにダメージを与え、精子の産生を変化させることが示唆されたわけです。
EDの危険因子にも

中国・山西医科大の研究グループは25年、英国大規模長期前向き研究における遺伝子情報関連解析の欧州系住民データ約42000人と勃起不全(ED)男性約6000人を対象にPM2・5の影響を解析しました。それによれば、遺伝子によって予測されたPM2・5の増加はEDリスクの増加と有意に相関し、EDの独立した危険因子であることが明らかになりました。
警報が出されたら
もちろん人体に与える影響も心配です。自治体から住民に対してPM2・5に関する注意喚起が行われたら、マスクの着用や不要不急の外出を控えた方が良いかもしれません。

山形徳洲会病院院長
笹川 五十次(ささがわ いそじ)
1982年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業、86年同大学大学院修了後、ハワイ州立大学医学部を経て、04年に山形徳洲会病院副院長、08年から現職。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医、日本透析医学会認定透析専門医。
