片頭痛の新治療目標
今回は国際頭痛学会から提唱された、片頭痛に対する新しい治療目標についてのお話です。
片頭痛とは

片頭痛は、世界で最も有病率が高く、多くの障害を引き起こす神経疾患の一つです。特に慢性片頭痛ともなると、薬物の過剰使用に伴って治療に抵抗性、あるいは難治性になることがあります。
最新の報告によれば、年間21%の患者が片頭痛が悪化するとされます。特に月に15日以上頭痛がある慢性片頭痛では脳の機能や構造にも変化が報告されており、その一部は予防治療では完全には回復しない可能性があります。
国際頭痛学会の疑問
片頭痛の治療目標は従来、発作が半減すれば有効な治療と定義していました。頭痛日数が月20日から10日に減れば有効というわけですが、国際頭痛学会はここに疑問を抱きました。「果たして月10日も片頭痛がある人の生活の質(QOL)はどうなのか」と。
実際、片頭痛が月4日以上という人のQOLは低いと言われています。
新しい治療目標
そこで同学会は2月、患者の側に立った新たな治療目標を発表しました。この中で、片頭痛の最適な治療目標は「片頭痛日数あるいは生活に支障がある頭痛が月3日以下」とうたっています。
頭痛日数が増えて障害が発生してからの対応的な治療(発作の予防)が中心だった従来の考え方を転換し、安全で効果的かつ忍容性の高い治療を早期に開始するという考え方を推奨しています。
そして、頭痛日数をゼロにするという極めて高い目標も掲げています。
症状の進行予防に力点
同学会の新たな目標設定を受け、各医療機関で行われる今後の頭痛治療は、最終的には片頭痛の進行を予防し、脳の健康を維持することが中心になっていくものと思われます。

TFメディカル 嶋北 内科・脳神経外科クリニック 医師
佐藤 篤(さとう あつし)
2002年山形大学医学部卒業。山大医学部附属病院、山形済生病院、済生館病院などを経て現職。日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医。医学博士。
