相続の基礎知識/(73)相続財産法人
相続というと、亡くなった方の配偶者や子供、兄弟姉妹が財産を引き継ぐというのが一般的ですが、昨今では、ご家族がいない単身者だったり、訳があって引き継ぐ人がいないというケースが増えています。
逆に言うと、相続人のいない財産が年々増えていて、このような財産は「相続財産法人」として扱われます。
◆ ◆
相続財産法人は、法律上独立した組織として扱われます。法人の代表者は、家庭裁判所によって選定される「相続財産管理人」で、その財産を管理・清算する役割を担います。
例えば、亡くなった方(A氏)の預金から葬儀費用を支払ったり、借金を返済したりするほか、必要であれば、不動産を売却して現金化する手続きも進めます。
また、相続財産法人が特別縁故者として「相続人でない親族(B氏)」に財産を分与することがあります。

◆ ◆
さて、ここで問題です。この場合、B氏に相続税は課税されるでしょうか?
正解はイエス。B氏はA氏から遺贈により財産を取得したものとみなされ、相続税が課税されます。
この場合の相続税の計算ですが、通常、基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で決まりますが、法定相続人がいないため、基礎控除は3000万円です。
また、財産の評価額は通常であれば相続開始時の時価になりますが、この場合は財産分与が確定した時の時価になります。
なお、B氏がA氏の葬式費用や医療費を負担していた場合には、それらの支出は相続財産から控除することができます。
◆ ◆
ところで、最終的に特別縁故者などの財産を引き継ぐ人が見つからないこともあります。その場合、亡くなった方の借金の清算などを終えても財産が残れば、その財産は国庫に帰属する(国に引き渡す)ことになります。

鈴木僚税理士事務所 税理士
鈴木 僚(すずき りょう)
1988年(昭和63年)山形市生まれ。2018年に税理士資格取得。趣味はドライブ。
