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セピア色の風景帖

《セピア色の風景帖》第192回 大峠道路(米沢市)

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 喜多方市と米沢市を結ぶ国道121号大峠(おおとうげ)道路が開通したのは2010年。それ以前は、明治中期に三島通庸(みちつね)福島県令によって建設されたつづら折れの旧道が幹線道路だった。

 三島は旧道の建設にあたり、15歳から60歳までの男女に2年間、月2度の無料労働義務を強いた。拒めば罰金も義務付けたので、住民の負担は大きく、有名な「福島事件」の原因のひとつにもなったとされる。

 新道は標高1156メートルの大峠を11本のトンネルが貫いているが、旧道にあったのは大峠隧道(すいどう)の1本だけ。初代のこの隧道が完成した時、坑口は石積みであった。

 旧道は1934年に拡幅され、自動車の運行が可能になり、隧道の坑口も石積みからコンクリートに変わった。ただ旧道の急こう配は以前のままで、積雪のため冬季閉鎖は6カ月にも及んだ。 

 新道は大峠を通らず、西へ約5キロ迂回して建設された。全面開通に先駆け92年に完成した大峠トンネルの延長は3940メートルで、東北のトンネルでは当時、最長だった。

 新トンネルの完成を受けて旧隧道は廃道になった。旧道は山形側、福島側とも廃道化が進んでいる。(F)

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