セピア色の風景帖
《セピア色の風景帖》第191回 薬師町通り(山形市)
急速に道路拡幅工事が進む山形市内では、ここ数年、見慣れた店々がいつの間にか姿を消していることに気づかされる。

植木まつりの主な舞台ともなる薬師町通りには、かつては多くの専門的な商店が建ち並び、量販店に足を運ばずとも一通りの用が足りるだけの品が手に入った。
生鮮食品もりや、佐藤牛肉、柴田魚屋、山岸文具、薬のやくし堂、菓子まつざかや、山川剣道具店、タカジュウ電器、中原たたみ等々が軒を連ね、まさに「商店街」の名にふさわしかった。
植木まつりの時にはそれぞれ店の前に売り場を広げ、祭りに華を添えていた。通りを一つ入れば銭湯すらあった。
そんな薬師町通りも道路拡幅を機に酒井洋品店など一部を除いて廃業してしまう店が相次ぎ、商店街としての機能は失われていった。この通りのシンボル的存在で、ソフトクリームが美味しいことで知られたまつざかやも、新店舗を構えることなく姿を消した。
あとにはただ、車がむなしく通り過ぎるだけの通りが残った。(F)
