背部錯感覚症
背中の痒(かゆ)みといえば、まず思い浮かぶのはアレルギーや湿疹(しっしん)ですが、ごく希(まれ)に神経が障害を受けた場合に背中に痒みが生じる「背部錯感覚症(はいぶさっかんかくしょう)」という病気があります。
肩甲骨の痒み
この病気は、肩甲骨の内側あたりに慢性的な痒みが続くのが特徴です。「乾燥のせいかな」と思って保湿剤を塗ったり、市販のかゆみ止めを使ったりしても効果はありません。
そして放置しておけば痒みが数カ月、あるいは数年にわたって持続することもあります。
原因は皮膚ではなく神経

この病気の原因は、皮膚ではなく神経にあります。背骨の中でも胸椎(きょうつい)と呼ばれる部分から出ている神経が、加齢による骨や椎間板(ついかんばん)の変形、または姿勢の悪さや筋肉のこわばりなどによって圧迫され、誤った刺激が脳に伝わることで「痒い」と感じてしまうのです。
この疾患は、40代以降の女性に多く見られる傾向があります。特にデスクワークや家事などで長時間同じ姿勢を続ける方、姿勢が悪くなりがちな方に多いとされます。
診断の手がかりは
診断の手がかりは、痒みが特定の場所に限られていること、皮膚に明らかな異常がないこと、ステロイドなどの一般的な薬が効かないことです。
必要に応じて、頸椎や胸椎の画像検査を行い、神経への圧迫がないかを調べることもあります。
有効な治療で改善
治療としては、局所麻酔作用のあるリドカインパッチを痒い場所に貼ったり、神経の興奮を抑える内服薬(プレガバリンやガバペンチンなど)を使用したりすることがあります。
また姿勢の改善や、肩甲骨周囲のストレッチ・筋トレ、頸椎のけん引などの理学療法を併用することで症状が改善することもあります。

十日町ようへい内科クリニック 院長
中本 洋平(なかもと ようへい)
1978年(昭和53年)、岩手県盛岡市生まれ。新潟大学医学部を卒業後、新潟市民病院などで内科医として研鑽を積む。2024年10月に十日町ようへい内科クリニックを開業。総合内科専門医、感染症専門医、Japanese Medical Emergency Care Course(JMECC)インストラクター。
