前立腺がんの診断
バイデン前米大統領が5月16日に前立腺(ぜんりつせん)がんと診断され、骨への転移が確認されました。どうして医療先進国のアメリカで前大統領の前立腺がんを早期発見できなかったのでしょうか?
基本はPSA検査
外電によりますと、バイデン氏は前立腺がんの腫瘍(しゅよう)マーカーであるPSA検査を2014年から受けていなかったそうです。前立腺がんは自覚症状がなく、1年に1回はPSA検査を受けることが勧められているというのに。
バイデン氏のここでの例を「他山の石」とし、50歳になったらPSA検査を受けることを心がけましょう。
最新腫瘍マーカーも登場

PSA値が異常値(4以上)を示した場合、組織を取ってがんの有無を調べる「生検」を行いますが、生検には出血や感染などのリスクも伴います。また異常値であっても必ずしも前立腺がんというわけではなく、その場合は不必要な生検を受けることになります。
こうした事態を避けるため、最近ではプロステートヘルスインデックス、PSAレクチン結合分画比といったPSA検査に代わる新しい腫瘍マーカーが登場していることも付記しておきます。
従来の生検の課題点
また、従来の生検は直腸に挿入した超音波診断機から前立腺を観察し、前立腺にまんべんなく針を刺して組織を採取する方法でしたが、この方法は体積の小さい早期前立腺がんの検出が課題とされてきました。
MRI標的生検の登場
近年はMRI(磁気共鳴画像法)による画像と超音波画像を統合する「MRI標的生検」という方法が登場しています。これは事前に撮影したMRI画像を超音波画像に重ね合わせ、ソフトウェアが適切な生検ポイントを視覚的に示すというもので、生検の診断精度が格段に向上しています。

いしい腎泌尿器科クリニック 院長
石井 達矢(いしい たつや)
1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。山形大学附属病院、山形市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て、2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士。日本泌尿器科学会認定専門医。日本医師会認定産業医。
