<荒井幸博のシネマつれづれ>フタリノセカイ

2022年4月22日
性的マイノリティー描く

 保育園に勤めるユイ(片山友希)と、実家の弁当屋を母と営む真也(坂東龍汰)は出会ってすぐに恋に落ちる。ユイは真也の家で暮らすようになり、「結婚して子どもを産み、幸せな家庭を築きたい」という夢を語る。だが真也は、自分が“体は女性、心は男性”のトランスジェンダーだということを打ち明けられずにいた。

<荒井幸博のシネマつれづれ>フタリノセカイ

 キスはするものの真也がその先に進めないことにユイが不信感を抱きはじめたある日、真也が病院に運ばれ、彼がトランスジェンダーであることが判明する。葛藤の中、やがて2人は別れを選択する。
 数年後、人妻になったユイと弁当屋を継いだ真也は再会する。お互いがかけがえのない存在だったことを再認識した2人は、今度こそ一緒に人生を歩んでいこうと決意し、大きな決断を下すのだった――。

 メガホンをとったのは東北芸術工科大の映像学科出身で、自身もトランスジェンダーであり、「ぴあフィルムフェスティバルPFFアワード2011」で自伝的作品「僕らの未来」が審査員特別賞を受賞するなど高い評価を受けた飯塚花笑監督。撮影は監督の故郷群馬県で、2019年に11日間で行われた。

 真也とユイ、真也の弁当屋で働く友人の俊平3人がカフェで話をするシーンには大きな感動を覚えたが、これが即興劇というから驚く。監督と俳優の信頼感のなせる業なのだろう。俊平役の松永拓野が素晴らしかった。
 近年は「彼らが本気で編むときは、」「ミッドナイトスワン」などトランスジェンダーをテーマにした高評価の作品が製作されているが、本作は自身がトランスジェンダーの飯塚監督だからこそ描けたもの。特に驚愕のラストシーンには脱帽。

 現在公開中の「チェリまほTHE MOVIE 30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」の風間太樹監督も芸工大出身で飯塚監督の後輩。「チア男子!!」に続く商業映画2作目。2人の活躍は嬉しい限りです。


<荒井幸博のシネマつれづれ>フタリノセカイ
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。