《おしえて!編集長》電気料金に異変

2022年4月22日
 「値上げの春」が盛んにメディアで報じられていますが、つい最近、口座から引き落とされる電気料金の額を見てビックリ!ひところに比べ凄く高くなっていて…。それだけじゃなく今、電気を巡っては制度を揺さぶりかねない深刻な問題も起きているんですって。
《おしえて!編集長》電気料金に異変
ガソリンや灯油の値上がりに気を取られていたら、知らないうちに電気料金も。

 過去5年で最高値 

 「電気はその都度使うものじゃなく、水道やガスと同じく恒常的に使うインフラだからね。その電気料金は確かに値上がりしていて、東北電力の標準家庭の4月のモデル料金は8431円で、1年前の6895円に比べ1536円、率にして22%上昇してる」
 「調べたところ、過去5年では最も高い。もちろん値上がりしているのはわれわれが暮らす東北電管内だけじゃなく、東京電や関西電など全国10電力管内も同じだ」

《おしえて!編集長》電気料金に異変

原因は何なんですか?

 燃料高が主因 

 「火力発電の原料になる石炭や石油、液化天然ガス(LNG)の値段が上がっているからさ。これらは『化石燃料』と総称されるんだけど、もともとコロナ禍からの需要回復に伴って値上がり傾向にあったんだ」

《おしえて!編集長》電気料金に異変

 ウクライナ危機が加わり 

 「値上がりに拍車をかけたのが2月末から始まったウクライナ危機だ。化石燃料の価格はほぼ原油価格に連動する仕組みになっている。ロシアは世界3位の原油産出量を誇っていたんだけど、ウクライナ侵攻に反発した西側諸国がロシア産原油の購入を見合わせている結果、世界的に原油の供給が減って価格が上昇しているわけだ」

そうだったんですね。

 円安でダブルパンチ 

 「それだけじゃない。為替市場では円安が進んでいて、直近だと1ドル=126円台と20年ぶりの安値だ。円安になるとどうなるんだっけ?」

え~と、輸入品は値上がりする!

 「正解!さっきの化石燃料はほぼ全量を輸入に頼っていて、国際価格は上昇の一途。そこに円安が進んでいるから、電力会社の調達価格にダブルで響いてくることになる。これが電気料金の値上がりにつながっているわけだね」

そこまでは分かりましたけど、制度を揺さぶりかねない問題って?

《おしえて!編集長》電気料金に異変

 6年前に全面自由化 

 「もともと電気って全国10電力の〝地域独占〟だったんだ。だけど『独占だと価格が硬直化する』『競争原理を働かせるべき』という声が高まり、2016年には電力小売りが全面自由化された。それを機に様々な業種が電力市場に参入してきたんだね」
 「これらの新規参入組は『新電力』と呼ばれ、全国に約700社もあるとされる。大半は自前の発電所を持っておらず、10電力が余剰分を流す卸市場で電力を調達してたんだ。自由化を推進する国の指導もあり、10電力は卸市場に一定量を流すよう義務付けられているらしい」

ふ~ん。

 新電力は窮地に 

 「新電力は電力10社より安い価格を提示してシェアを伸ばしてきたんだけど、調達先の卸市場の電力価格が上昇して危機に直面してる。安さで新規顧客を開拓できなくなったり、既存客には調達価格が販売価格を上回るという〝逆ザヤ〟状態に陥ったりしてるんだ」
 「逆ザヤということは、売れば売るほど赤字になるってことだよね。しかもこの状況が短期で変わるとは思えない。だから新電力の間では新規の契約を停止したり、事業から撤退するところが増えてる」
 「民間信用調査機関によると、21年度に新規契約停止や事業撤退、倒産に至った新電力は31社に達したらしい」

えー!

《おしえて!編集長》電気料金に異変

 事業停止、倒産も 

 「新電力も大変だけど、安さに引かれて新電力に切り替えた法人、個人も顔面真っ青。契約を打ち切られて、代わりの新電力を探しても、大半は新規の契約を停止してるんだから」
 「東北における新電力のシェアは21年12月の販売量ベースで16.1%。山形に参入してきた業者も多いけど、4月末に事業から撤退することを表明しているウエスト電力(広島市)の比率が高かったようだ」

じゃあ、どうすればいいんでしょうか?

 需要家も悲鳴 

 「そんな場合、電気事業法ではセーフティーネットとして『最終保障供給』という制度が定められていて、沖縄電を除く電力9社からの供給が受けられる。ただし期間は原則1年以内、料金は約20%高という条件がつくんだけどね」
 「東北電に聞くと、それでも3月以降、法人、個人から『何とかしてくれ!』という依頼は増えてるんだって。俺が東北電だったら、『うちから切り替えておいて、何をいまさら』ってところだろうけどね(苦笑)」

これからどうなるんですかね。

 「さっきも言ったように化石燃料価格は当面は高止まりが続くとみられ、火力発電への依存度を見直そうというムードになるんだろうな。同時に、11年の東日本大震災以来、関西電や九州電などを除いて事実上ストップしている原子力発電所の再稼働を巡る論議も活発化していくだろう」