医学のうんちく/コロナワクチン(上)

2021年7月9日
 今号と次号では新型コロナウイルスワクチンについて解説します。

ワクチンとは

 そもそもワクチンとは、体にウイルスや細菌などの病原体が侵入した際、事前に免疫をつけておくことで病気の発症や重症化を予防する医薬品のことです。
 ワクチンにはいくつかの種類があります。代表的なのは、病原体の毒性をギリギリまで弱めた「生ワクチン」と、病原体の毒性を完全になくした「不活化ワクチン」です。前者は結核、麻疹、風疹などの予防に使われ、後者はインフルエンザ、A型肝炎、百日咳、ポリオ、狂犬病などの予防に使われます。
 このほか、病原体を構成するたんぱく質だけを抽出した「サブユニットワクチン」もあり、これはB型肝炎、帯状疱疹などの予防に使われます。

医学のうんちく/コロナワクチン(上)

遺伝情報を基に

 一方、新型コロナウイルスワクチンはこれらとは全く異なります。従来のワクチンが実際の病原体を“原料”にしていたのに対し、病原体は使わず、病原体の遺伝情報を基にしているのです。

mRNAワクチン

 米ファイザー社と米モデルナ社のワクチンは「mRNAワクチン」と呼ばれ、人間に感染する際に足掛かりとするスパイクたんぱく質の設計図となるmRNAを脂質で包んで体内に投与し、設計図の情報を基に細胞内でコロナウイルスの蛋白質を作らせます。その結果、免疫が誘導され、コロナウイルスの感染を予防します。

ベクターワクチン

 英アストラゼネカ社やロシアのスプートニクVのワクチンは「ベクターワクチン」と呼ばれます。スパイクたんぱく質の設計図となるRNAを運び屋(ベクター)として無害なウイルスに組み込んで投与し、ヒトの細胞に感染させて体内でスパイクたんぱく質を作らせることで生体の免疫が誘導され、抗体が作られる仕組みです。


医学のうんちく/コロナワクチン(上)
医学のうんちく/Y染色体のお話(中)
山形徳洲会病院院長
笹川 五十次
(ささがわ・いそじ)1982年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業、86年同大学大学院修了後、ハワイ州立大学医学部を経て、04年に山形徳洲会病院副院長、08年から現職。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医、日本透析医学会認定透析専門医、日本腎臓学会認定腎臓専門医。