<荒井幸博のシネマつれづれ> おとなの事情 スマホをのぞいたら

2021年1月22日
大人のエンタメコメディ

 六甲隆(益岡徹)と絵里(鈴木保奈美)は60才と50才の医師同士のセレブ夫婦、園山零士(田口浩正)と薫(常盤貴子)は倦怠期を迎えた40代の夫婦、向井幸治(淵上泰史)と杏(木南晴夏)は30代の新婚夫婦、そして一見シュッとしているが何故かモテない40代半ばの独身・小山三平(東山紀之)。
 3組の夫婦と1人の独身男はある出来事をきっかけに固い絆で結ばれ、年に1度集まっては交流を深めていた。

 今年も楽しい時間を過ごすはずだったが、プレイボーイの夫に不信感を抱いた杏が「夫婦って何?秘密がないなら、それぞれのスマホに届く全てのメールと電話を全員に公開してはどう?」と禁断のゲームをすることを提案する。
 やましいことがないなら公開できるはずという杏の主張に絵里と薫が同調。女性たちに促され、夫たちも渋々テーブル上にスマホを置く。自分は独身だから関係ないと独り料理をパクついていた三平も置かざるを得ない羽目に。そこから物語は予測不能な方向へ。
 和気あいあいとした場は緊張感あふれる場に様変わり。実は、全員が絶対知られたくない秘密を抱え、自分のスマホが鳴らないことを祈るばかり。非情にもスマホの着信があるたびに、交流の場は修羅場と化していくのだった――。

 原作映画は18カ国でリメイクされたイタリア映画「おとなの事情」。当初のうわべだけの調子のいい会話から、秘密がバレたことで本音むき出しの激論に。空気が一変する様が達者な俳優陣の演技で、笑わされ、ちょっぴり身につまされ、そしてホロリとさせられる。
 モテない独身男でイジられ役三平を演じた東山は新境地を開いた。巧者・益岡と田口は表情で語り、笑わせる。90年代トレンディドラマを代表する女優の鈴木と常盤が初共演ながら見事にコラボ。木南は不安を抱えた若妻、淵上は軽薄ポジティヴな夫を好演。
 鑑賞後は自分のスマホを固く握りしめているはず。大人のエンターテインメント・コメディ。


<荒井幸博のシネマつれづれ> おとなの事情 スマホをのぞいたら
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(木曜12時)を担当。