《セピア色の風景帖》第138回 番外編 大沼デパート

2020年2月14日
 40代以上の人なら、閉店した大沼の屋上にあった遊園地を覚えているだろう。丸久や松坂屋の屋上にも遊戯施設はあったが、大沼の地下には映画館まで備わっていた。
 家族連れが過ごすには子ども向け施設は必須のもので、大沼は多くの家族に楽しい、懐かしい思い出を提供していた。
《セピア色の風景帖》第138回 番外編 大沼デパート

 だが経営者はいつしか「収益の上がらない遊戯施設は無駄」とばかりに屋上を閉鎖し始めた。子ども連れは別の行き場を探さなければならなくなった。
 かつてデパートで楽しい思い出を得た人々は大人になってもデパートに愛着を抱き、特別の場所と認識してきた。だが世代が代わり、子どものころにデパートで遊んだ記憶のない人たちの認識は違ったようだった。

《セピア色の風景帖》第138回 番外編 大沼デパート

 デパートの存在を脅かしたイオンはジャスコ当時から子どもの遊び場を疎かにしなかった。「買い物は家族で行くもの」という立ち位置を見失うことがなかった。

 命運尽きて閉じる店にとって閉店セールはいわば葬式だと思う。今まで店に親しんだ人々が駆け付け最後の別れを惜しむ。店員は感謝を客に伝え、終焉のシャッターが下りるまで涙しながら深々と頭を下げる…。

《セピア色の風景帖》第138回 番外編 大沼デパート

 そんな場さえ与えられなかった老舗デパートの終わり方は、長年愛顧した市民、県民と、真摯に営業に力を尽くした従業員にとってこの上ない不幸であったと言わざるを得ない。(F)