《おしえて!! 編集長》 「はえぬき」の実力って?

2007年10月12日
 食欲の秋本番。食といえば基本になるのは何といってもおコメ。ここ山形のおコメといえば「はえぬき」「どまんなか」が有名ですが、「コシヒカリ」「あきたこまち」なんかに比べておいしさとか、全国的な知名度とかってどうなのかしら? もっと知りたい山形のおコメ——。そこで何でも知ってて頼りになる編集長に聞いてみました。
《おしえて!! 編集長》 「はえぬき」の実力って?
「はえぬき」「どまんなか」ってどうなんですか?

平成4年にデビュー

 「2つの銘柄ともデビューしたのは1992年(平成4年)。それまでの主力銘柄はササニシキだったんだけど、一時のブームに乗って全国に栽培面積が広がった結果、品質が落ちてブランドイメージが低下しちゃった」
 「そこで新ブランドで巻き返そうと県が大々的に2銘柄を売り出したんだ。当時のキャッチフレーズは『ユメのコメ』(笑)」

はえぬきに一本化へ

 「当初は2枚看板だったんだけど、『どまんなか』はデビュー翌年に冷害にあってつまづいちゃったほか、やっぱり2銘柄を売り込むのは難しいということで現在は『はえぬき』に一本化されつつある」

山形っ子の私的には、「はえぬき」っておいしいと思うんですけど。

13年連続で特A!

 「ズバリ、おいしいです。日本穀物検定協会っていう団体が毎年実施しているコメの食味ランキングがあって、『はえぬき』は13年連続で最高位の『特A』を獲得している。13年連続なんて記録を持ってるのは他銘柄では『魚沼産コシヒカリ』だけ。つまり味覚のプロもおいしさに太鼓判を押してるってわけ」
 「盆地の山形の内陸部って、寒暖の差が大きいじゃん。サクランボとかの果物もそうだけど、これがコメのおいしさにもつながっているらしい。あと草丈がそれほど長くないから栽培しやすいことも見逃せない。まあ、山形の気候風土にあったコメといえるんじゃないかな」
《おしえて!! 編集長》 「はえぬき」の実力って?
「はえぬき」、エラ〜イ。味の特徴ってあるんですか?

セブンイレブンのおにぎりに!

 「ツブツブとした歯ごたえが特徴で、弾力感があるわりに淡白な味だから、弁当やおにぎりに向くとされてる。知ってた? セブンイレブンが売ってるおにぎりの原料は『山形産はえぬき』なんだぜ」
 「もちろん県内の店舗だけじゃなくて、北海道から九州までの全店舗のおにぎりも」
ヘー、ヘー、へー。90へえ。


セブン向けは4分の1

 「調べてみると、セブンイレブンに納入するようになったのは2001年からで、数量は年間5万5000トン。これは県内の『はえぬき』生産量のざっと4分の1。この大口商談が決まった時、JA全農山形の担当者は〜落合さんっていう陽気なオジサンなんだけど〜嬉し涙が出てきて、心の中で中島みゆきの『地上の星』を歌ってたんだって。『プロジェクトX』かよ(苦笑)」

当初は100%を供給

 「セブンのおにぎりは当初は『はえぬき』100%だったんだけど、その後の急速な出店ペースに山形側の供給が追いつかなくなって、現在は80%が『はえぬき』、残る20%が他県産というブレンド米が使われてるらしい。それでも『はえぬき』がセブンのおにぎりを支えている構図に変わりはない」

でも、ちゃんと表示してくれないと分らないですよね。

原料表示には至らず


 「そこが問題なんだな。現在のブレンド米ならともかく、100%だった時代も、全農とか県が表示するようお願いしてもセブンは首を縦に振ってくれない」
 「一方でセブンは、以前は『会津産コシヒカリ』とか、現在は『有明産のり』とか表示してるんだけどね」

セブンイレブンって、山形に恨みでもあるんですかね(怒)

ブランドイメージに問題

 「ないと思うけど(苦笑)。つまり、こういうことなんだ。01年から原料に使い続けてるってことは、セブンは価格も含めて『はえぬき』を評価してくれてる。でも、あえて表示するほど一般の消費者にブランドイメージは定着していないと判断しているんだ」
 「この判断っていうのは、県外の消費者の共通認識なんだよ。このブランドイメージっていうのが『はえぬき』の抱える大きなネックになってる」

もっと具体的に教えて下さい。

不当に低い?評価


 「さっき『魚沼産コシヒカリ』って出てきただろ。食味のプロの間では同じ特Aの評価なのに、60キロ当たりの卸価格は『はえぬき』の1万4000円台に比べて2万円台。『魚沼産コシヒカリ』が過大に評価されてるっていうか、『山形産はえぬき』が不当に評価されてるっていうか、この差がブランドイメージってことなんだろうね」

どうしてそうなっちゃったんですか?
ネーミングで失敗?

 「難しい質問だけど、まずネーミングで失敗したっていう指摘はあるね。コメの名称って『あきたこまち』とか『はなの舞』とか、女性をイメージしたようなのが多いだろ。だから決定当初、時代錯誤もはなはだしいって県議会でも問題になったらしい」

決定的なPR不足

 「あとは、やっぱり宣伝が下手なんだよなあ。山形の人間とか、農産物とか工業製品とか、ホントに優秀なんだけど、PR不足で全国的な知名度に欠ける。『はえぬき』がたどってきた足取りって、山形の本質を象徴してる感じがする」
 「ただ県内の生産者は不満だろうけど、消費者にとってはおいしい『はえぬき』が手ごろな価格で食べられるわけで、食欲の秋を満喫しましょ」

新しいコメのブランドが生まれそうだって話も聞きましたけど。

10年に新ブランドも


 「これまでの反省に立ち、県は9年かけて育成してきた新品種『山形97号』を2010年にデビューさせる計画を進めている。食味試験の結果も上々で、生産体制の整備や販売戦略などを検討し、今度こそ名実ともに認められる日本一のブランド米を育成するらしい」