女性の美と健康/乳がん(下)
「集学的治療」の考え方
これまでは手術が最優先され、放射線や薬物は手術の補助的治療と位置づけられていたきらいがありました。
その後、手術だけでは根治性に限界があることが分かってきたほか、放射線や薬物の治療法も向上してきました。
このため、現在においてはそれぞれの治療法の特性をいかし、3つを総合的に組み合わせる「集学的治療」という考え方が主流になってきています。

手術にも変化が
こうした考え方の変化が端的に現れているのが乳房の温存手術。かつて乳がんの手術といえば乳房全体を切除するやり方(全摘術)が一般的でしたが、その後、シコリが小さい比較的早期の乳がんなら乳房の一部を切除するだけのやり方(温存術)が増えてきました。
温存術の場合、術後の放射線治療は不可欠ですが、2つを組み合わせれば全摘術と治療成果に大差はありません。
「温存」より「全摘」
ただ、最近になって「温存」より「全摘」を望む患者さんが全国的に増える傾向にあるというから驚きです。
その理由は、シリコーンなどを使った乳房の再建手術が2013年に保険適用になり、それまで自費で約100万円かかっていた再建手術が保険適用内(4万~25万円の自己負担)でできるようになったことが指摘されています。
再発リスクを抱えても温存を選んでいた人たちが、再建手術が受けやすくなったため全摘を選ぶようになったわけです。
納得いくまで相談を
とまれ、乳がんが見つかってどの治療法を選択するか、手術の場合はどうすのかなど、納得するまで医師と話し合うことをお勧めします。


セントラルクリニック院長
村山 一彦
プロフィール
●(むらやま・かずひこ)1956年山形市生まれ。埼玉医科大学を卒業後、同大、篠田総合病院を経て2004年に産婦人科を中心とするセントラルクリニックを開院。社会福祉法人・慈風会の理事長として特別養護老人ホーム「なごみの里」、認可保育所「はらっぱ保育園」も手がける。