女性の美と健康/自律神経失調症(1)
交感と副交感の乱れ
自律神経は自分の意思とは関係なく働く神経で、心臓を動かす、呼吸をする、食物を消化する、汗をかくといった作用をつかさどります。人間が生きていくうえでとても大事な神経というわけですね。
自律神経には体が活動している時や昼間に活発になる交感神経と、休んでいる時や夜間に活発になる副交感神経があります。この交感神経と副交感神経のバランスが崩れた状態を自律神経失調症と呼ぶことがあります。

症状は不定愁訴
その症状は実に様々で「頭が重い」「肩がこる」「イライラする」「寝つきが悪い」などとされます。「不定愁訴(しゅうそ)」のイメージですね。
正式な病名ではなく
しかし――。一部において自律神経失調症という言葉が独り歩きしていますが、国際的には自律神経失調症という病気は存在しません!
国際的には「うつ病」「パニック障害」「適応障害」「過敏性腸症候群」などと診断され、日本の医学会でも自律神経失調症は「神経症やうつ病に付随する各種症状を総称したもの」という考え方が一般的です。
安易に使う医師も
ではなぜ自律神経失調症という病名が有名になったのかといえば、不定愁訴を訴える患者さんにその原因を特定できない一部の医師が安易にこの病名を使ってしまうからと考えられます。
病名が分かると患者さんも安心するという側面はあるので、一概に否定はできませんが…。
ただ、何でも自律神経失調症で片付けてしまうと、がんなど重大な病気を見逃すことにもつながりかねません。


セントラルクリニック院長
村山 一彦
プロフィール
●(むらやま・かずひこ)1956年山形市生まれ。埼玉医科大学を卒業後、同大、篠田総合病院を経て2004年に産婦人科を中心とするセントラルクリニックを開院。社会福祉法人・慈風会の理事長として特別養護老人ホーム「なごみの里」、認可保育所「はらっぱ保育園」も手がける。