《セピア色の風景帖》 第六十五回 熊沢商店

2013年11月8日
 山辺町で長く住民に親しまれてきた駄菓子屋「熊沢商店」がこの秋、58年の歴史に幕を下ろすという新聞記事を目にした。
《セピア色の風景帖》 第六十五回 熊沢商店

 熊沢商店は山辺町ふるさと資料館の近くにあった。店内には駄菓子やアイスクリームなどのほか、プラモデル、ミニカー、人形といった子どもの喜ぶものばかりが所狭しと並んでいた。
 店にいるのは小柄なおばさん1人。店には近所の子どもがひっきりなしに訪れるとともに、昔を懐かしむ大人の姿もよく見かけた。
 おばさんは子どもにも大人にも変わらず律儀に品物の説明をしてくれたり、おまけを付けてくれたりした。短時間でもここに寄ると気分は子どもの頃に帰って癒されるのだった。
 店内に並んでいる商品は最近ではコンビニにも置いてあるが、コンビニでは子どもはそれを無言でレジに運ぶだけである。店員からの話し掛けなどありはしない。

《セピア色の風景帖》 第六十五回 熊沢商店

 駄菓子屋の値打ちは商品にとどまらず会話にあったように思う。限られた小遣いを有効に使うために子ども同士が相談したり、店主のアドバイスを参考にしたりして社会性を身に付けていったのではないか。
 そういう貴重な場がまたひとつ消えていくことが淋しい。 (F)