<荒井幸博のシネマつれづれ> 天心の譜(しらべ)

2012年11月23日
SOと震災描く記録映画
<荒井幸博のシネマつれづれ> 天心の譜(しらべ)

 知的障害のある人の自立や社会参加を目的に設立されたスペシャルオリンピックス(SO)。
 古希を迎えても力強く情熱的な指揮で聴衆を魅了する小林研一郎、通称コバケン。2010年、SOの趣旨に賛同した小林は自ら率いる「コバケンとその仲間たちオーケストラ」に障害のある31名の演奏家を加え、SOに贈るコンサートを開くための練習を始める。本作はその練習風景や公演までの足取りを追ったドキュメンタリー。
 福島県いわき市出身の小林が被災した学校で子どもたちに語りかける場面も。そして震災後の6月、ギリシャのアテネで開かれたSO夏季世界大会に参加した日本選手団の中には被災した2人のアスリートがいた――。 そんな彼らにカメラを向け半分以上の撮影を手がけたのは、05年に長野で開催されたSO冬季世界大会の記録班として誕生した知的障害のある9人の「ビリーブクルー」。
 メガホンを執ったのは小栗謙一監督。制作総指揮は元総理夫人の細川佳代子さん。
 細川さんは21年前、「どんなに医学が進歩しても2%の確率で知的障害を持つ子どもが生まれる。それはその子の周囲の人たちに優しさや思いやりを教えるための神様からの贈りもの」と牧師から教わり、それまで自分が誤解と偏見、哀れみの気持ちしかなかったことに気づいたとか。
 以来、障害のある人が普通の場所で普通に暮らせる「インクルージョン社会」を目指しSOへの支援を続けている。


<荒井幸博のシネマつれづれ> 天心の譜(しらべ)
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜8時)を担当。