<荒井幸博のシネマつれづれ> ダンシング・チャップリン

夢のコラボが実現
「ダンシング・チャップリン」は世界的振付家ローラン・プティが、バレエダンサーで長年の盟友ルイジ・ボニーノのために1991年にバレエ化した演目。そのボニーノが還暦を迎え映像化を考えるようになったプティ。プティ作品で踊ったことのある草刈の夫(周防)は優れた映画監督であることを知っていた。
2年前に引退を明言していた草刈の踊りを映像として残しておきたいと考えていた周防にとっても映画化の話は渡りに舟だった。
かくして20年近く「ダンシング・チャップリン」を演出してきたプティと主演のボニーノ、初めて本作に出演する草刈がともに歩み出す。
見どころが随所に
本番までの60日間の第1幕「アプローチ」と本番の舞台「バレエ」を第2幕として構成。プティは撮影当時85歳の高齢だが、警官隊の場面での撮影プランを巡って周防と意見が合わず、そのやり取りの緊張感に息を飲まされる。また草刈を満足にリフトできない若手ダンサーへの草刈の苛立ちなども手に取るように伝わってくる。若々しいダンスを見せ、指導もするボニーノが寄る年波を隠せない場面も必見だ。
草刈民代が眩いほど
フランス人のプティ、イタリア人のボニーノという世界的なバレエ人に臆することなく英語でわたり合う草刈がダンスとともに眩(まばゆ)い。2幕「バレエ」はお馴染みの音楽でチャップリン好きも楽しめる圧巻のバレエシーンの連続。
「Shall we ダンス?」で出会い、結婚して15年の周防・草刈夫妻の変わらぬ仲睦まじさが微笑ましい。

1957年、山形市生まれ。シネマ・パーソナリティーとして数多くの地元メディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。