ドクター松本の医食同源(60)/緊急時の糖尿病治療(上)
山形の避難所におられる方々の中には糖尿病患者もいらっしゃると拝察し、専門医の立場から非常時の糖尿病治療についてお話しします。
食生活の変化に対応
糖尿病のインスリン治療は通常の食生活を送っていることを前提に毎日一定量の注射を打ちますが、今回の震災のように通常の食事ができない場合は注意が必要です。

おにぎり1個しか食べられないような状態で普段の量を注射すると「低血糖」を生じ、冷や汗、動悸、指のふるえなどの症状があらわれます。極端な場合は意識がもうろうとなり、昏睡状態になることもあります。
通常ならブドウ糖やジュース類を飲めば改善しますが、非常時にはこれらが手に入らないこともあるでしょう。ですからインスリンの量を減らす必要があり、体内からインスリンが出ている2型糖尿病の場合は1日に摂取できる食事のカロリーに合わせて2分の1、3分の1にします。
昏睡がコワい1型
ただ体内からインスリンが出ていない1型糖尿病の場合はインスリンを減らすと「高血糖」を生じ、糖尿病性昏睡に至ることがあるので注意が必要です。
1型糖尿病では通常1日3回、食前に打つ追加インスリンと、1日1〜2回、就寝前か朝に打つ基礎インスリンの2種類のインスリンを用います。基礎インスリンは食事の摂取に関係なく必要で、基本的には中止や減量はできません。
医師とよく相談して
追加インスリンは食べない場合や食べる量が極端に少ない場合は中止や減らすことが可能ですが、どの程度減らせばいいのかを医師とよく相談する必要があります。

1985年山形大学医学部卒業。山形県立中央病院勤務の後、2007年5月に松本内科クリニックを開業。日本糖尿病学会認定糖尿病専門医、日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医。