<荒井幸博のシネマつれづれ> 「ヒア アフター」のクリント・イーストウッド
公開中の「ヒア アフター」はクリント・イーストウッドにとり監督として31作目にあたる。
今年5月で81歳に
今年5月で81歳を迎えるというのに、「ミスティック・リバー(2003)」、「ミリオンダラー・ベイビー」(04)、「父親たちの星条旗」(06)、「硫黄島からの手紙」(06)、「チェンジリング」(08)、「グラン・トリノ」(08)、「インビクタス/負けざる者たち」(09)、そして「ヒア アフター」と、最近もハイペースで作品を世に送り出している。

監督に主演、音楽も
俳優としては「半魚人の逆襲」(1955年)で端役デビューしてから56年。還暦を過ぎてからの20年間だけをみても「ホワイトハンター ブラックハート」(90)を皮切りに「グラン・トリノ」まで12本で、うち11本が監督兼任。他に監督専任が7本。この19本のうち5本で音楽も担当している。しかも「許されざる者」「ミリオンダラー・ベイビー」がアカデミー賞作品賞と監督賞をダブル受賞。他の作品も大半がアカデミー賞部門賞のいずれかを受賞、もしくはノミネートを果たしている。
「今」の大切さを訴え
「ヒア アフター」は“来世”を意味するが、単に霊界を描こうとしたのではない。大切な肉親を亡くした者、死にかけた者、死者と対話できる者それぞれが「死」と向き合い、悩み、悲しみを抱く中で3人の人生が交錯していく——。
「死」をテーマにしているが、今を大切に生きようと思わせてくれる作品。彼自身が作曲したエンディング曲のアコースティックギターの音色に心癒される。
老いてますます盛ん
彼は現在、レオナルド・ディカプリオ主演の「J・Edgar」に取り組んでいる。創作意欲は衰えるところを知らず、ますます盛んなのが嬉しい。

1957年、山形市生まれ。シネマ・パーソナリティーとして数多くの地元メディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。