<荒井幸博のシネマつれづれ> ヘヴンズ ストーリー
2010年12月24日
増える殺人事件に迫る
留守中に自宅で両親と姉を殺された8歳の少女サトは祖父に引き取られる日、10代の少年に妻子を殺されテレビで「法律が赦してもこの手で犯人を殺す」と宣言するトモキを見る。少年には死刑ではなく無期懲役の判決が下されていた。この日からトモキはサトにとっての英雄になった。

殺人事件がテーマ
本作はこの2人を中心に展開していき、上映時間は興行的に考えればあり得ない4時間超! 先日、キャンペーンで来形した瀬々敬久(せせたかひさ)監督に話を伺った。
「この映画は撮影に1年半かけた。のっぴきならない設定が多いので最初は役者もスタッフも完全には判らない状態でスタートした」
上映時間は4時間超!
「途中で肉付けしたり足したりしていくという作業を重ね、成長しながら深みにはまっていった。だから皆が実際の人生を過ごしているように活き活き見えるはず」
成長著しい出演陣
実際、主要キャストの寉岡萌希(つるおかもえき)、長谷川朝晴(ともはる)、忍成(おしなり)修吾、菜葉菜(なはな)の成長は目覚しく、村上淳の変貌ぶりは著しい。フォークシンガー山崎ハコ、柄本明、佐藤浩市は従来のイメージをかなぐり捨てるかのような熱演ぶりに驚かされる。ラスト近くの重要な場面は西蔵王高原と蔵王エコーラインで撮影されている。
裁判員制度を契機に
殺人の加害者、被害者、残された家族——。様々なことを考えさせられる。裁判員制度の導入で市民が死刑判決を下す時代になった今だからこそ観て欲しい映画だ。

荒井幸博(あらい・ゆきひろ)
1957年、山形市生まれ。シネマ・パーソナリティーとして数多くの地元メディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。
1957年、山形市生まれ。シネマ・パーソナリティーとして数多くの地元メディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。