<荒井幸博のシネマつれづれ> 行きずりの街

14年ぶりの再会
仲村さんとは14年ぶりの再会。山形出身の村川透監督「あぶない刑事リターンズ」の取材で撮影現場に伺った際、館ひろしさん、柴田恭兵さん、そして仲村さんが銀行に潜入したテロリストを追い詰めるシーンで、私はエキストラ出演させてもったのでした。
恭兵さん、山形…。
当時を振り返り仲村さんは「自分に演技の師匠がいるとしたら柴田恭兵さん。最近共演した時も『トオル、あそこはこうで次はこう』と指示されると素直に聞いてしまう」。押しも押されぬ主演俳優になった今でもユウジとトオルの関係は昔のままらしい。恩師とも慕う村川透監督と長く一緒に仕事をしてきて山形は身近に感じてくれていたとか。
阪本監督とは初仕事
「行きずりの街」のメガホンをとったのは1989年前に「どついたるねん」で鮮烈デビューした阪本順治監督で、阪本作品に出演するのは初めて。実は「どついたるねん」の公開直後に仲村さんは阪本監督に逢っていて、映画に感動した仲村さんが「素晴らしかったです。この映画に自分が出てないことが悔しい」と素直な感想をぶつけたら気まずい空気が流れ、それっきり仕事に呼ばれないまま20年。
そして昨年、阪本監督から「あの時は『俺が演ったらもっと良くなっていた』というおごりが感じられた」と言われハッと気が付いた仲村さん。素直に認められるようになったという仲村さんに俳優として、人間としての成長を感じた。
渾身の作品に
「行きずりの街」は仲村さんにとり映画出演50本目の記念碑的作品にしてデビュー25年で培ったものを余すことなく発揮した渾身の作品。

1957年、山形市生まれ。シネマ・パーソナリティーとして数多くの地元メディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。