<荒井幸博のシネマつれづれ> 銀幕から消えるタバコ
喫煙家には肩身の狭い時代になってきた。そういえば映画やテレビから喫煙場面がめっきり減って久しい。
印象的な喫煙シーン
私が憧れたタバコが似合う俳優といえば松田優作、萩原健一、柴田恭兵といったところか。印象に残るのは「太陽にほえろ」で露口茂演じる山さんの喫煙シーン。チェリーの箱から1本取り出し、火をつけ終わったマッチを再びマッチ箱に入れて眉間に縦ジワを寄せながらうまそうに一服。流れるような動作にシビれた。かつては時間の経過を吸殻の数が示した。

かつて高峰秀子も
高峰秀子は木下恵介監督作品「二十四の瞳」「喜びも悲しみも幾歳月」などで演じた清楚な日本女性というイメージが強いが、同じ木下作品「カルメン故郷に帰る」では気のいいストリッパー役でタバコを吸っているし、「浮雲」でも喫煙場面があった。
愛煙家で有名な淡路恵子
20代の若さでマダムを演じることの多かった淡路恵子は最もタバコが似合う女優といわれたが、私生活でも愛煙家として知られる。
2年前に米沢市で開催した「伴淳映画祭」でトークショーのゲストとして淡路さんをお招きした際、本題の伴淳さんの話から脱線して「愛煙家の権利」を声高に訴えていたことが愉快な記憶として残っている。
欧米映画でも重要な役割
ハリウッド映画ではハンフリー・ボガートが常にタバコをくわえていたし、マレーネ・ディートリッヒもタバコの似合う女優だった。フランス映画「さらば友よ」では、警察に連行されるチャールズ・ブロンソンのタバコにアラン・ドロンが火を貸してやるラストシーンが印象的だ。
こうして考えると、映画やドラマからタバコが消えるのは時代の流れとはいえ、味気なさを感じてしまう。

1957年、山形市生まれ。シネマ・パーソナリティーとして数多くの地元メディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。