<荒井幸博のシネマつれづれ> 小川の辺(ほとり)

2010年10月8日
時代が求める藤沢作品

 昨今、ちょっとした時代劇映画ブームが起きている。

時代劇映画がブーム

 「十三人の刺客」 「大奥」 「桜田門外の変」 「雷桜」が先月から今月にかけて相次いで公開され、12月には「武士の家計簿」 「最後の忠臣蔵」と続く。ちなみに10月1日公開の「大奥」は初日17万人動員の大ヒットを記録した。
 歴史好きの女性いわゆる「歴女(れきじょ)」や会社をリタイアした団塊の世代が時代劇映画の支持層とされているが、現在の不安定な政治・社会のアンチテーゼとして、ブレることなく高潔に生きる武士の姿への憧憬が観る人を惹きつけるのではないだろうか。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 小川の辺(ほとり)

主演、再び東山紀之

 そんな中、鶴岡市出身の藤沢周平さんの短編小説を原作にした「小川の辺(ほとり)」が山形市を中心に撮影されている。今回も理不尽な藩命を従容(しょうよう)と受け入れ、脱藩して妹の夫を討ちにいく武士の物語。
 主人公の戌井(いぬい)朔之助(さくのすけ)を演じるのは東山紀之で、2008年に公開された「山桜」に続く藤沢作品での主演。彼のストイックで凛(りん)とした佇(たたず)まいは藤沢ワールドにピッタリ。その東山は「藤沢先生が描く高潔さや潔(いさぎよ)さ、美しさ、正々堂々さは日本人の財産だと思います」と熱く語っている。
 
山形で数多くロケ  

 妹役は06年公開の米国映画「バベル」でアカデミー賞にノミネートされた菊地凛子。県内での撮影は9月からスタート、湯殿山や鳥海山、山形市の山寺や馬見ケ崎などでのロケが10月10日ごろまで行われる予定。
 
公開は来年初夏  

 本作は02年公開の「たそがれ清兵衛」を皮切りに相次ぎ製作されてきた藤沢周平作品映画化の8作目になる。こうして考えると今の時代劇映画ブームの先鞭(せんべん)を付けたのが藤沢作品だったのではないだろうか。公開は来年初夏。括目(かつもく)して待ちましょう。


<荒井幸博のシネマつれづれ> 小川の辺(ほとり)
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマ・パーソナリティーとして数多くの地元メディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。