もう怖くない認知症/「感動療法」のススメ(3)

2010年2月12日
 人が感動した時、脳や体にはどんな変化が起こっているのでしょうか。

「感動」とは?

 感極まって涙するような感動におそわれると情動の中核である大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)が刺激され、大脳の新皮質、特に前頭葉の領域の血流量が著しく増加することが知られています。同時に体をリラックスさせる副交感神経が優位になり、しばらく脱力感が押し寄せ、いわゆるジーンと体がしびれるような状態になることがわかっています。

もう怖くない認知症/「感動療法」のススメ(3)

脳と体に好影響

 すなわち感動することは脳(心)と体に素晴らしく良い影響を与えるのです。感動を認知症の患者さんにより多く味わっていただくことがどんなに価値があることであるかお分かりいただけると思います。
 実際、感動療法を終えてご自宅に戻られた患者さんのご家族にその日の患者さんの様子を尋ねてみると、「いつもより会話が弾んだ」「夜は穏やかにぐっすり眠っていた」といった声を多く聞きます。
 私たちが発表した論文の中に「認知症患者に一番必要なのはどんな薬より『良い刺激』である」という一文がありますが、常に患者さんを喜ばせ、感激させ、そこから湧きあがる「感動」を共有することが大切なのです。
 
自身の認知症予防にも

 認知症の患者さんが長い人生の中でこつこつと積み上げてきた結晶性知能の扉を開くツールが感動なのです。日ごろからどんなささいな事でも感動できる方法を身につけておくことは認知症の患者さんと良い関係を築くことができるだけでなく、実は自身の認知症予防にも役立つことでしょう。

 

もう怖くない認知症/「感動療法」のススメ(3)
藤井 昌彦(ふじい・まさひこ)
秋田県能代市生まれ。1983年弘前大学医学部卒業。山形県立河北病院などに勤務後、99年に医療法人東北医療福祉会理事長。日本老年医学会、日本認知症ケア学会に所属。東北大学医学部臨床教授も務める。