もう怖くない認知症/「老い」の延長上の状態
85歳以上では25%
身近に認知症になった人がいて、どう対応したらいいのかと相談にみえる方がいます。自分が認知症になったらどうしようと心配される方もいます。私たちは認知症という病気とどう向き合っていけばばいいのでしょうか?
認知症を発症する最大の危険因子に加齢、すなわち「老い」があります。ある研究結果によれば85歳以上の4人に1人、95歳以上では半数超の人が認知症になることがわかっています。つまり認知症は老いの延長上の「あるがままの状態」ともいえます。

特別な病気ではない!?
だとすれば認知症を特別な病気ととらえ、なんとかして治すという考え方は正しいのでしょうか。残念ながら現在の医学や医療では不老不死を得ることができない以上、こうした考え方にはどこかに無理があるように思います。
幸せに暮らすのは可能
ただ、よい介入を行うことによって認知症の進行を遅らせ、症状を安定させていくことは可能です。新しい知見をもとに自然に老いてゆく姿を受け入れれば、「認知症」をかかえた患者さん本人も周囲の人も幸せに過ごすことは不可能ではないというのが私の基本的な考えです。
そのためには理解を
そのためには認知症の患者さんだけでなく、周囲のすべての人が認知症にかかわるメカニズムを正しく理解する必要があります。本稿を通してこれからみなさんと一緒に考えていきたいと思います。

秋田県能代市生まれ。1983年弘前大学医学部卒業。山形県立河北病院などに勤務後、99年に医療法人東北医療福祉会理事長。日本老年医学会、日本認知症ケア学会に所属。東北大学医学部臨床教授も務める。