徹底して山形に密着したフリーペーパー

《セピア色の風景帖》第159回 旧宇津トンネル

2022年4月22日
 国道113号飯豊―小国間で最も名の知られた宇津トンネルは、他の多くのトンネルに先駆けて平成3年、新トンネルに付け替えられた。
《セピア色の風景帖》第159回 旧宇津トンネル

 旧宇津トンネルに続く道は特殊な線形になっていた。現在の道はほぼ自然に無理のない線を描いて新トンネルに流れ込んでいるが、旧道は、現在新トンネルが貫いている山を目前にして直角を描いて折れていた。
 主要国道だけに交通量は多いが、重大な事故の原因にもなりかねない危険な状態のまま旧トンネルに車の流れを導いていたのである。
 このような線形が採用された背景には、できるだけトンネル延長を切りつめ、経費を浮かせたいという事情が見え隠れする。交通戦争開始の時代だった昭和40年代には、コスト削減が安全に優先するというのは当然の思想だったのであろう。

 こうして無理のある線形で狭く、低く作られた大動脈は、後の時代の安全思想により老朽を迎える前に葬られることとなった。
 わずかなトンネル短縮のためにねじ曲げられた路線は、経費節約どころか結局無駄になった。「安物買いの銭失い」とは後の世なればこそ言えることなのであるが、まさにその典型となってしまった。(F)