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<荒井幸博のシネマつれづれ>パワー・オブ・ザ・ドッグ

2022年3月25日
アカデミー賞最有力作品

 第94回アカデミー賞が27日(日本時間28日)、ロサンゼルスで発表される。濱口竜介監督「ドライブ・マイ・カー」が日本映画では初の作品賞にノミネートされ、国内でも賞の行方が注目されているが、作品賞で最大のライバルになりそうなのが「パワー・オブ・ザ・ドッグ」だ。
 同作品は動画配信大手ネットフリックスの制作で、作品賞のほか監督賞や脚色賞など最多11部門で候補入りしており、配信系が初受賞するかどうかも焦点。その「パワー・オブ・ザ・ドッグ」が25日から公開される。

<荒井幸博のシネマつれづれ>パワー・オブ・ザ・ドッグ

 舞台は1920年代の米・モンタナ州の牧場。大牧場主で男性的な兄のフィルと、心根の優しい弟のジョージのバーバンク兄弟はある日、未亡人のローズとその一人息子のピーターに出会う。
 やがてジョージはフィルに相談もなくローズと結婚、ピーターともども家に迎え入れたことから兄弟間に亀裂が生じる。
 ローズに嫌悪感を募らせるフィルは彼女やピーターに執拗な嫌がらせを始める。ローズの心は徐々に病み、アルコール依存症になっていく。
 そんな生活が続くう ち、フィルのセクシュア リティの秘密がピーターに知られ、そこから フィルはピーターとの距離を縮めていく。

 冷酷で、マッチョの象徴のようなフィルの素顔が徐々に明らかになる一方、中性的に見えたピーターの本質と母との絆の強さが次第に露わになり、ラストにかけ驚きの展開に。

 ジェーン・カンピオン監督は「ピアノ・レッスン」で第46回カンヌ国際映画祭で女性監督として初のパルム・ドール賞、第66回アカデミー賞では脚本賞、主演女優賞、助演女優賞の3冠に輝いている。あれから 28年の歳月を経て、本作によって再び賞レースを争う檜舞台に躍り出た。
 フィル役のベネディクト・カンバーバッチは英国立劇場の舞台で活躍する英国紳士だが、本作では男の世界に拘泥しながらも複雑な内面を抱えた西部男を見事に演じきっている。


<荒井幸博のシネマつれづれ>パワー・オブ・ザ・ドッグ
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。